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5. プレートガーダーの構造

5.2 細部設計上の課題


5.2.3 有効幅の問題

図5.4 断面のソリは剪断応力度で生じる    図5.5 ソリの変化で生じる局部応力度

 I形断面を曲げ部材として使うときは、普通はフランジ全断面が有効に作用すると仮定します。しかし、ウエブ高さに較べて相対的にフランジ幅を広くした断面は、曲げモーメントに対してフランジ全体が均一の圧縮または引張応力にはならないだろう、と漠然と想像します。この問題を理論的に扱う力学モデルは、薄板の面外への変形ではなく、面内での応力と変形を扱う二次元弾性体です。細長い部材の応力解析では、平面保持の仮定が実用的に使われますが、有効幅を定める力学モデルは、平面保持からのズレを考えます。この現象は、板面内の剪断応力が関係します。理論的に扱うときは、シアラグ(shear lag)と呼ばれています。実践的な数値計算に応用するときは、剪断流理論が使われます。実用的な設計法に応用するときに、有効幅の形に消化して扱います。有効幅は、合成桁の設計計算のとき、鉄筋コンクリートのスラブ幅を鋼桁と一体化して曲げ部材に換算するときに必要になりました。あまり難しく考えない実用的な解決法は、スラブ厚、もしくは板厚の12倍の張り出し幅を有効幅とします。鉄筋コンクリートT桁の計算の場合にも、張り出し部分の有効幅をスラブ厚の12倍までを断面算定の範囲とします。この12倍前後の数値は、二つ上の段落でも紹介しましたが、種々の細部設計の寸法提案に現れます。桁端の垂直補剛材は、圧縮を受ける柱としての計算をしますが、ウエブの板厚の25倍(≒12+12)を柱の断面に加えます。
2009.8 橋梁&都市PROJECT

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