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3. トラスの影響線

3.1 影響線の力学


3.1.5 弦材自重の曲げモーメントを最小にする工夫

図3.6 弦材の標準的断面
 トラスは軸方向力のみが作用すると仮定しましたが、上弦材及び下弦材には曲げモーメントも作用します。図3.6に上弦材と下弦材の標準的な断面を示します。曲げモーメントは、部材の自重によるものと、断面重心とトラスの骨組み線との偏心によるものです。弦材の自重は、格点をピンと考え単純桁として曲げモーメントを求めます。断面重心とトラスの骨組み線の偏心は最大断面を用いて定めます。上弦材には圧縮力が作用しますので、断面重心をトラスの骨組み線より上側に定めます。下弦材には引張力が作用しますので、断面重心をトラスの骨組み線の下側に定めます。トラスの断面は非常に小さく、曲げに対する抵抗力が小さく、可能な限り曲げモーメントの発生を少なくする必要があります。トラスの格点に荷重が作用するものとしますから、トラスの影響線は、単位荷重を格点位置ごとに作用させ、格点間を直線で結んだ折れ線構造に描きます。床組みは、厳密に考えると、横桁位置を弾性支点とした連続構造の性質も持ちますが、実践的な仮定はそこまで考えません。一般的な性質として、単純トラス橋の上下弦材軸力の影響線は、単純梁の曲げモーメントの影響線と相似です。斜材軸力の影響線は、せん断力の影響線と相似ですが、間接載荷の区間でショートカット状に切り落とした多角形になります。前章で紹介したような、垂直材を持たないワーレントラスの場合には、上弦材の格点と下弦材の格点が支間方向で交互にずれていますので、下路トラスの下弦材は三角形の頭を切られたような影響線になります(連載-2 図− 2.8)。なお、単純梁に置き換えて曲げモーメントとせん断力の影響線を求める座標位置は、斜材の向きと関係を持ち、上下弦材では同じ位置になりません。この判断を機械的に決め、符号も論理的に整合させるようにするには、EXCEL の表計算機能を巧みに使う知恵(プログラミング)が必要です。

図3.6の解説:
・上弦材__トラス骨組み線に作用する圧縮力による曲げモーメントにより、自重によるモーメントを打ち消す。最初に上フランジと腹板を溶接し、最後に下フランジを外側より溶接する。
・下弦材__トラス骨組み線に作用する引張力による曲げモーメントにより、自重によるモーメントを打ち消す。最初に下フランジと腹板を溶接し、最後に上フランジを外側より溶接する。上フランジは水が溜まらないように腹板と同じ位置から数ミリ上側に出す。
2009.6 橋梁&都市PROJECT

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