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2. 単純トラス橋の力学

2.3 トラスの力学


2.3.1 静定トラスが解析の基本

図2.3 ピントラスの構造図(例)
 トラスは、図形的には三角形の集合です。複数の辺、つまり部材、が結合する点が格点です。節点の用語は、有限要素法(FEM)などの方で使っています。橋としての構造は、通路を直接支える床版と縦桁を等間隔で支える区間が格間(パネル)です。この長さが一つの単位です。格点は、トラス部材が自由に回転ができるようにピンとヒンジで結合されていると仮定します。部材は軸力だけが作用し、曲げモーメントも剪断力も作用しません。この仮定を満たすように格点を製作したものをピントラスと言い、昔のトラス橋で使われました(図2.3、図2.5)。溶接技術が未発達の時代、引張材を鍛造で製作し、この両端に穴を開けてピン結合をしました。しかし、ピンの個所で耐久性が悪くなり、騒音や振動の原因となりますので、格点で部材をリベットで剛結合するようになりました。

図2.4 剛結合トラスの構造図(例)
  図2.4の構造は、ラーメン(ドイツ語のRahmen:英語ではrigid frame)です。トラス全体をラーメン構造に仮定すると、非常に高次の不静定構造になります。FEMが利用できなかった時代は、数値計算方法に種々の工夫が必要でした。しかし計算の結果を比較してみると、軸力の性質はピントラスの仮定と殆ど変わりません。ラーメンとして計算すると、トラス部材に曲げモーメントも作用しますが、実際構造の寸法では、それによる応力度はあまり大きくなりません。これを、トラスの二次応力であると見なし、それによる応力度は許容応力度を決めるときの安全率の範囲で吸収できることが判りました。トラス全体を静定トラスで設計するのが合理的ですが、これに余分な部材または付加的な支点や拘束が増えた場合が不静定トラスです。不静定構造にすると幾らか不経済な断面設計になります。普通には、単純支持の静定トラスとして構造設計をします。
2009.5 橋梁&都市PROJECT

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