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2. 単純トラス橋の力学

2.2 静定トラスの幾何学


2.2.3 初等幾何学の華の趣があること

 トラスは、その形状が三角形の集合であることから出発して、初等幾何学の原理に基づいた計算が多いことが特徴の一つです。長さの計算をするために座標系の考え方を必要とします。ピタゴラスの定理を応用して、直角三角形の斜辺の長さ、の計算が頻繁に行われます。これにはルートを開く計算が必須です。高度なコンピュータを使うまでもなく、ルート計算の機能を持った簡単な電卓で、コンピュータ処理の検算を行うことができます。長さの計算には三角形の相似則を応用した比例計算も随所に現れます。式の原理を説明するときに三角関数を使うことがあっても、実際の計算は比例計算で済ますことができます。図2.9の説明の中では、三角形の一つの頂点から対辺に垂線を降ろし、その垂線長さの計算がありますが、これも比例計算で求めます。影響線の面積計算も、単純な三角形の面積計算が応用されます。これらの初等幾何学原理の計算は、手順を追って組み合わせます。これがEXCELを使うプログラミングであって、計算手順が縦に並ぶセルに組み込まれます。このとき、向きなどのトポロジー的な性質を考えて符号を付け替えることが必要になります。ワーレントラスの斜材は、向きによって圧縮材か引張材になるのがそうです。これらの計算は、最も初等的な計算幾何学(computational geometry)であると言えます。しかし、設計計算書にまとめるときは、精度良く計算したことを誇示するような、桁数の多い数字を並べることをしません。常識的な数値の表し方は、有効数字は5桁程度、小数部は、3桁以内に納めます。EXCELではセルの書式制御が簡単に指定できますので、体裁のよい計算書を作成することができます。第2.4節の末尾に計算原理の説明と、それを応用した計算の例を示してあります。印刷紙面では文字が小さく、計算を追いかける情報が不足しますが、イラストは表計算の組み立て方をどのようにするかの見本として見て下さい。
2009.5 橋梁&都市PROJECT

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