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2. 単純トラス橋の力学

2.2 静定トラスの幾何学


2.2.1 種々の座標系の約束が混在すること

 一般的に、構造物の寸法を言うとき、負の数を使う習慣がありません。構造解析では、数学的な座標系の考え方も必要とします。トラスの形状は、高さ方向をy軸の正の向きに取る数学座標系を当てはめることができます。寸法数値は、負の数を使いませんので、格点の位置を支間方向(x軸)で言うときは、便宜的に原点位置を左下側の支点に置きます。トラス形状の左右対称性を考えて、原点をトラスの中央には置きません。一方、橋梁の解析では、外力は殆どが重さです。その作用方向は下向きです。変形は力の作用方向で考えますので、撓みは下向きをyとする座標を使います。それに合わせて、部材の曲げモーメントと剪断力をグラフに描くとき、正の符号を下向きとします。曲げ部材の変形は部材の曲率を二度積分した形を持ちます。曲げモーメントは曲率と同じ符号で表します。数学座標を考えて変形を求めると、下向きに凸になる曲線の曲率が正の符号を持ちます。撓み方向を変数にすると、下向きに凸になる曲線の曲率は負の符号になります。曲げモーメントの符号は正に取りますので、曲率にマイナスを付けて曲げモーメントの符号に合わせます。軸力・曲げモーメント・剪断力は部材の内部応力ですので、部材を仮に切断した断面に作用する外力として符号を考えます。そうすると、どちらの断面を使うかで、力の向きの約束が変ります。部材にも座標系を必要とし、これを使って部材の断面係数などの計算をします。このように、幾つかの座標系を使い分けますので、影響線のグラフを求めて表示する場合も、また、それを利用する場合にも、座標軸の記号・正の向きの約束、に注意が必要です。
2009.5 橋梁&都市PROJECT

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