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2. 単純トラス橋の力学

2.1 トラス橋の構造形式


2.1.2 通路を確保する空間が必要であること

図2.2 ポニートラスの断面図(例)
 普通のトラス橋は、箱状に組んだトラスの下面を通路にする下路橋(スルー: through bridge)の形式を取ります。デザイン的には橋の側面形状が重要な要素です。これを主構と言います。この部材の組み方に、上で説明したハウ・プラット・ワーレンの名称が使われます。通路の空間を確保するため、左右主構面の上下を横構(ラテラル)で繋ぎます。このままでは、通路断面を斜めに変形させる力に抵抗できませんので、対傾構(スウェイ)が必要です。しかし、これにトラス組みを採用すると、通路を塞ぎますので、橋の入り口部分の主構部材と端水平構部材とをラーメン構造で設計します。これを橋門構(ポータル)と言います。橋の中間に作用する側面からの力は横構で受けて、端の橋門構に伝える計算をします。通路の中間にも簡単な対傾構を付けることもしますが、力学計算は省きます。下路橋の下弦材は、設計計算では水平とします。上弦材は水平の場合と、放物線にする場合とがあります。前者を平行弦トラス、後者を曲弦トラスと言います。上弦材の高さは、通路の高さ方向の建築限界(4.5m)に加えて、床組・上対傾構・上下弦材、それぞれの高さを加えますので、少なくとも7mの高さを持たせます。国鉄時代の鉄道橋の建築限界は高さが7.7mですので、鉄道橋はトラス高さが高く、通路側から見ると、単線の鉄道橋はやや華奢に見えます。支間が狭く高さを必要としないトラス橋では、上横構(upper lateral)が組めません。この構造をポニートラス(pony truss)と言います(図2.2)。なお、実際のトラス橋の下弦格点(部材の集まる点)は、路面中央が両支点を結ぶ線よりも高くなるような勾配を付け、さらに、製作時には自重による撓み分を加えたそり(キャンバーcamber)を付けますが、力学計算ではこれらを考えません。
2009.5 橋梁&都市PROJECT

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