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1. 橋梁設計の実務

1.1 設計文書の性格


1.1.3 設計者はお習字の素養が必要であったこと

 図面も計算書も、コンピュータが利用できなかった時代は、手書きで作成することが常識でした。下手な字で文書を残すのは恥さらしですので、設計者はきれいな字と図を書く素養が欠かせませんでした。設計者が粗原稿を作成して、字や製図の上手な人に清書してもらう、または活版印刷にする、などの手間をかけるのは例外でした。図面と計算書は、公文書としての書式と体裁も整える必要があります。設計者は、構造計算などの勉強と同時に、先達が残した図面や計算書を見本にして、実用文書のまとめ方の勉強が必須でした。図面と計算書とを見ると、どこの企業の、誰が作成したか、までが分かるほど個性的な文書の性格がありました。コンピュータが普及して、ワードプロセッサとプリンタが便利に使えるようになりましたので、文字や図を手で書くことが少なくなりました。しかし、公文書としての文書のまとめ方は、きちんと勉強しておく必要があります。この方面の実学は、学校教育ではほとんど教えていません。
2009.4 橋梁&都市PROJECT

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