2.2 オブジェクト・プロパティ・メソッド・ファイル・デバイス

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 VBでは、簡単な作図ならばウインドウのクライアント領域を実質の作画装置として使えます。ここがフォーム (Form)です。フォームは種々のオブジェクトを載せる作業台の性格もあります。フォームの中に、ボタン図形のような、操作を伴い、ハードウェア的な機能を持たせるものをコントロール(制御)と言い、これも部品(オブジェクト)を表す普通名詞の扱いです。コントロールには特徴のある図形デザインと固有の名称とがあります。フォームに直接文字や図形を描き込むよりも、グラフィックスを描く専用の画板を載せる方が何かと便利です。これをピクチャーボックス(picturebox)と言い、一つの部品です。描かれた図形もオブジェクト扱いをします。図形は、円・矩形・直線などで作画させますので、その手段と方法とがVB側で準備されます。これをメソッド (method) と言います。考え方は、一種の定義されたコマンドまたはサブルーチンです。これは、キーワードに続けて引き数の種類と並びとが決められています。基本的なグラフィックスメソッドは、Cls, PSet, Line, Circle, Printの五つしかありません。上で説明したプロパティでも、ユーザーが値を設定すると、それに応じて処理が行なわれるものがありますので、それはプロパティであると同時にメソッドとも言えます。線を描くときの典型的なプロパティが、線の太さ (DrawWidth)、線の種類 (DrawStyle)、色です。

 モニタに表示された画像は一過性ですので、レポートなどに利用するためにはハードコピーの形で画像が再現できなければなりません。これは、広い意味ではグラフィックスの課題ですが、むしろ編集とファイル処理の範疇に入れます。作図のデータを一旦ファイルに書き出しておいて、そのファイルから間接的に作図させる、と考えます。一般論として画像の再現には元のグラフィックスプログラムを保存することも含めますが、ここではビットマップのデータファイルか、メタファイルかの二種類の利用を指します。データをファイルから読み出して表示させるグラフィックス媒体も擬似的にファイルを書き出す装置(デバイス)です。この考え方はDOSの場合と同じです。プリンタ、プロッタ、モニタそのものは、もちろんデバイスと考えることができますが、メモリ内部でデータの読み書きをするときも、内部に擬似的なデバイスを考えます。ユーザーが処理する場合の区別は、便宜上編集処理に分類します。クリップボードを介してデータの読み書きをするのがそうです。

 プログラム内部の扱いには、デバイスの種類を論理機番で区別します。この機番を指定してデータの読み書きをすると、それぞれのデバイスドライバーが適切な処理をしてくれます。少し高度なグラフィックス処理をするときには、VBからWindows APIを呼び出して使うのですが、そのとき、hDCというパラメータを使います。これが論理機番に相当するのですが、呼び方としてはデバイスコンテキストのハンドル(handle of Device Context)といいます。デバイスコンテキストは、デバイスドライバを利用する窓口です。

 グラフィックス装置は、便宜的にline drawing 系とpainting系とに区別します。モニター上にpainting専用の画板を別に用意できます。これには、イメージ(image)と呼ぶ部品をフォームに載せます。ビットマップデータの表示は、線図を引くと言う作図とメソッドの性質が少し異なりますので、ピクチャーボックスを載せたフォームとは独立して、イメージを載せたフォームを別に用意することにします。これが、二種類のグラフィックスウインドウを準備する意味です。

 作図されたグラフィックスをファイルに保存し、それを読んで図を再現させるには二種類の方法があります。一つは、表示されている図形をビットマップ形式でファイルに保存する方法です。もともとモニタに表示されているのはビットマップの画像ですので、このデータの保存には、GIF,JPGなどの拡張子のついたファイル形式が良く使われます。これを読み出して、同じくビットマップ原理のプリンタにデータを転送してハードコピーが取れるようにしておくと、レポートなどに利用することができます。もう一つの方法は、作画のメソッドを文書の記述方式でファイルに保存する方法です。このファイルをグラフィックスメタファイル、または単にメタファイル(metafile)と言います。グラフィックスのプログラミングコードもメタファイル的な性格があります。メタファイルを使う作画法は、line drawing 系のグラフィックス装置を使う場合に必要ですが、この装置がやや専門的ですので、一般のパソコンユーザには馴染が薄い方法です。メタファイル仕様のテキストファイルをユーザが別に作成しておいて、これを読み込んで作図させる機能を、このVB_Graphicsに用意しました。したがって、このVB_Graphicsは、グラフィックスの観察だけでなく、ユーザが簡単な作図もできます。


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