1.4 用語としてのWindowの使い分け

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 パソコンのOSにWindowsが採用されるようになって、英単語のwindowがそこら中でで出てきますので、交通整理の意味もあって、使い方と使われ方について解説します。単純にwindow(s)と使うと、窓または窓枠のことを指す普通名詞ですが、特定の定義や概念を決めて使うと専門用語(technical term)になります。そのため、専門書では、用語の定義(Definition)が必ずあって、この用語はこの意義で使います、と断ります。常識的な専門用語であるとして説明なしに使う場合には、念のために用語集(glossary)を付けるか、用語索引に載せておいて、別の用語集で意味が分るようにするのが丁寧です。

 大文字で始めるWindowsは、「米マイクロソフト社の登録商標です」のような断り書きが目に付きます。これは、スズキ、トヨタは自動車の商品名です、と断るようなものです。固有名詞扱いですが、豊田さんや鈴木さんとは違いますよ、と念を押したものです。商品名として登録されていると、他の会社が同じ表現、または、それと似た紛らわしい名前を商品名につけることができません。

 WindowsのOSに出てくるwindowは専門用語として使いますが、普通名詞の扱いです。つまり、一つ二つと数えられる物扱いです。この解説書ではカタカナ用語のウインドウを使うようにしています。ウインドウは、具体的に目に見え、モニタに表示される矩形の枠組み図形を指します。通常のウインドウデザインは、表示用の領域を囲む全体の枠があって、タイトルバーが必ずつきます。メニューバーや、スクロールバーなども付きますので、有効な作業領域が少し狭まります。

 プログラミングをする場合には、ウインドウの各部分に名前を付け、その機能や使い方の約束が必要です。この部品としての総称に、抽象名詞のオブジェクト(object)を使います。これは、概念的にはハードウェアを代表させるような、目に見える「物」の意義を持っています。日本語には抽象的な意味を表す用語が少ないので、カタカナ用語のままで使います。英語ではobjectの用語が色々な場所で出てきます。英語を母国語としている人には説明なしに理解できるようですが、日本語の環境では非常に馴染み難い用語です。オブジェクトは、ここでは部品とかパーツと考えると分かりやすいと思います。一つの部品は、幾つかの小さな部品を集めて構成する場合もあります。参考書ではオブジェクトの用語がやたらと出てきますが、部品と読み替えると理解し易いでしょう。

 物に対応する用語は事ですが、形が無い意義を考えると、ファンクションの英語で考えるのが適当でしょう。ファンクションは性能とか機能を表します。数学のファンクションは関数と訳しますが、考えてみれば、ある変数を使って別の変数に変える機能を持つものです。プログラミングは、何かの仕事をさせる機能を持たせるように工夫したものですが、形を持った物で表すことができませんので、ソフトウェアのような呼び方が使われるようになりました。オブジェクト指向プログラミングは object oriented programming が原義で、orientedの部分を指向に直しただけの単純なカタカナ用語です。この意味は、プログラミングをするとき、使う部品を決め、その機能を生かすようにプログラミングをする、と言うことです。グラフィックスのプログラミングは、典型的なオブジェクト指向プログラミングになります。何故かというと、利用するグラフィックスデバイスに合わせてプログラミングをしなければならないからです。

 もう一つ、グラフィックスの用語としてのwindowがあります。こちらは原義の「窓」の意味に近い定義であって、窓から外の景色を見るとき、窓枠が切り取る世界座標の寸法を意味します。カメラのファインダを覗いて見える矩形領域と考えると分かりやすいと思います。平面図形を写真に撮ると考えて、平面図形の方に世界座標系を定義しておいて、切り出す矩形領域を世界座標で定義します。三次元の空間をカメラで撮影するとき、カメラのファインダで見る世界は立体的な四角錐の領域になります。この範囲の図形を中心投影の原理で平面的なフイルム上に写します。これらは、カメラを向けると言う操作を伴いますので、windowingのような動名詞も使われています。撮影したフィルムは、引き伸して印画紙に焼きつけますが、グラフィックスの用語では図を貼付ける領域をビューポート(viewport)と言います。実を言うと、コンピュータのモニタ画面に複数のウインドウを置くと言うのは、グラフィックスの専門では複数のビューポートを置くことです。ビューポート上に、windowを通して見た元の世界座標系を割り付けることになります。上のウインドウと投影の方のウインドウと、両方とも普通に使われますので、一寸混乱することがあります。


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