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11. 数理弾性学

11.3 二次元弾性体の解析


11.3.5 境界条件を考える

図 11.2孔を挟む最小断面の応力度分布
 二次元弾性体の解析の目標は、或る荷重条件のとき、変形よりも、応力度の分布を知ることに重点があります。変形は、任意の個所での変位成分(u,v)として、前項の式(11.10)に使われています。解析の手順としては、uとvとに関して微分方程式を求め、その解を得ます。(u,v)の解析解が得られれば、式(11.10)から歪みが得られ、それを式(11.8b)に代入することで、応力度が計算できます。境界条件は、主に図形としての外周で、周に直交する方向の垂直応力度と周方向の剪断応力度が0です。円形の周を持つ形状の場合には、上で紹介した条件式で使われている直交座標系を極座標に変換した方が便利です。この表現式の紹介はここでは省きますが、応用力学の参考書に見ることができます。境界条件を考えなくても応力度分布が得られる一つの例として、図11.1aに示した穴あき板の穴周辺の応力度分布を、エアリーの応力関数、式(11.6)、式(11.7)だけから求めることができます。無限に広い二次元応力度の場に、円孔が一つ空いていて、全体がx軸方向に一定の引張り応力度σを受けているモデルは、境界条件が簡単になります。

 半径 rの円孔の周辺における応力度の解は、種々の参考書に紹介されています。y方向で見たx軸方向の応力度は次の式が得られています。
   
 ただし、y≧rの条件があります。穴の周では、最大で平均応力度の3倍の応力集中が起きることが理論解として得られます。実際の鋼板では、この局部的な応力度は、降伏点を超えない範囲で平均化が起きます。また、静的な破断強度は、最小断面積が全体で一様な降伏点になったとした強度を示すことが実験的に知られています。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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