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10. 衝撃・振動・疲労

10.2 振動と波動


10.2.1 一か所で観察するとき振動として扱う

 橋梁のように、全体をマクロに見て梁として扱うことができる構造は、或る一か所での振動は6成分を考える必要があります。通常は鉛直方向の撓み振動に注目します。全体系で見ると、横方向の曲げと捻じれの性質を含めた、3成分の振動を知ることが基本です。しかし、他の成分に関しては、特に注目しません。一方、船舶、航空機などの乗り物では、回転成分の方を主に注目し、ピッチ (pitch)、ロール(roll)、ヨー (yaw)として取り上げます。力学的に振動を解析するモデルは、全体を質点(マス;mass)の集合とします。質点間の相互移動が拘束された一体物として扱えるときは、剛体の力学に分類します。質点間の相対的な移動に弾性的な拘束が有る場合の実践的な扱いは、有限個数の集中質点(lumped mass)の集合でモデル化します。質点一個について3方向に運動の自由度がありますので、質点数がN個であれば3N個の振動モードの解析が必要です。通常の解析、例えば橋桁の振動では、橋桁の上下動と捩じれに注目し、必要があれば横方向の振動も扱います。この制限をすると、振動モード解析の手間が減ります。実際構造物の振動測定は、その構造物の力学モデルを仮定して、固有振動モードの解析と、そのモードごとの固有振動数の解析をして、実測値と比較します。実測値をよく説明できれば、対象とした構造物の力学モデルが同定されたと判断できます。この振動測定の測定個所を選択するとき、振動モードの節に当たる個所であれば、その振動モードの性質が得られませんし、また、部分的に独立に振動する二次部材の測定位置を選ぶと、説明に困るデータが得られる、などの問題があります。その意味で、構造モデルを理解した上で、振動測定技術そのものについても研究が必要です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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