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10. 衝撃・振動・疲労

10.1 応力の動的な増加


10.1.2 衝突の力学は運動量の保存則を使う

 一般力学授業の期末試験の古典的な問題に、衝突があります。これを解く条件は、運動量の保存則を使うのが正しく、運動エネルギーの保存則を使うのは間違いです。運動エネルギー保存則も同時に成立するのは、質点の材料が理想的な弾性体の場合です。普通の材料は、衝突させると、運動のエネルギーの一部が塑性変形、または熱、に使われます。材料力学の課題と取り上げるときは、力の作用と変形とを時間的に追いかける解析をします。このとき、「力が材料の中を伝わる速さ」(5.1.1項も参照)が無視できるときは、衝突が起きて運動が止まるまでの運動方程式を解けば、力の大きさが得られます。この力による応力度が、材料の弾性範囲内であれば、反撥(リバウンド)や振動を起こします。降伏点よりも高ければ、この降伏点で決まる一定の反力がブレーキ作用をして、或る距離の塑性変形量が出ます。このとき、どれだけの塑性エネルギー分が吸収できるかで、衝突後の運動が決まります。材料の破壊に使われるエネルギーの全量を使い切れば、破断が起こります。塑性変形の途中で止まると、弾性エネルギー分が未だ残っていれば、衝突後であってもリバウンドや振動を起こします。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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