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9. 材料の破壊と部材の破壊

9.2 破壊の力学モデル


9.2.7 実験技術が難しいこと

 図 9.5は、コンクリートの場合を想定して三つのモール円を描いてありますが、この理想的な応力状態を実験的に再現する方法は、技術的に難しいところがあります。シリンダ強度は、便宜的に圧縮強度として扱いますが、破壊の様子は、部分的にみれば圧縮応力の勝った剪断破壊です。二次元応力状態で純粋な剪断応力度の場を実現させる載荷方法はできませんので、純剪断応力場での強度は、純引張強度度からの推定が使われます。その純引張強度の実験も、鋼材のような直接的な試験法が採用できません。現在の試験方法は、赤沢常雄の方法が実用的に最も便利ですので、これが試験法になっています。それは円柱試験体を横置きにした圧縮実験に代えて引張強度に換算します。矩形断面の梁を曲げで破壊させる実験は、梁の下縁が引張応力の場になって、そこで破断が始まりますので、引張強度を求めていることになるのですが、荷重直下での応力状態がやや複雑になるので、強度が幾らか高めに計算されます。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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