材料の丈夫さ、強さと言うときは、寸法や力の掛け方違いなども含めた広い意義で言い、相対的に大きさの程度を言います。あまり意識はしないようですが、日常の用語として、丈夫さは、実用的な許容範囲での大きさの意味があり、強さは最大値の意味を持って使い分けています。工学的に応力の程度の大小を言うときは、材料の単位断面積に作用する力(応力度)に換算します。最も分かり易い力の掛け方は、細長い材料を引っ張るときであって、例えば鋼材で言えば、降服点が丈夫さの指標であり、破断時の応力が強さです。鋼材の強度と言うときは、引張強さとほぼ同義です。尤も、力学モデルに利用するときは、降伏点強度、破断強度と使い分けることもします。理論的に定義する応力度は、材料の微分的に考えた単位断面積に作用する力です。引張試験で破断するときは、伸びによって断面積が次第に小さくなり、元の断面積ではなくなっています。材料試験の結果を言うときは、意識的に強度の用語を使わないで、引張強さと言います。圧縮試験や曲げ試験などでは、応力度の分布が単純ではありません。例えば、セメントの強度試験は、4cm×4cm断面寸法で長さ16cmの梁をモルタルで製作します。最初、曲げ試験をして、折れた部分について圧縮試験をします。データの整理では強度の用語を使わず、曲げ強さ、圧縮強さと言います。実験的に得られた強さから、理想的な応力状態での強さを、引張強度、圧縮強度、剪断強度などに整理して設計時の力学モデルに使います。
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