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9. 材料の破壊と部材の破壊

9.1 材料試験の計画と結果の見方


9.1.3 材料試験機の原理

 材料試験に使う試験体は、多くのデータを得るために個数が必要です。あまり寸法を大きくしない、標準的な寸法を決めておき、多くの試験結果を統計的に比較できるように基準を決めます。標準的な試験機は、材料試験体に、引張・圧縮・曲げなどの載荷ができる装置です。通称で万能試験機(universal testing machine)と言います。荷重の大きさと変位の関係を作図するレコーダも付属しています。これで得られたグラフが、材料の「応力度・歪み曲線:stress strain curve」として参考書などに示されている図の原形です(図9.2参照)。数学モデルを考えて作図したのではありません。試験機の生命は、荷重を作用させる方法と、変位と荷重の精密な測定装置にあります。変位の計測は長さの測定ですので、従来からの計測装置を応用できます。荷重の載荷方法とその大きさの精密な測定には種々の工夫が必要です。戦前までは、欧米の試験機を輸入して使いました。特に有名な会社名がスイスのアムスラー社(Amsler)でしたので、万能試験機のことをアムスラー式試験機とも言います。材料試験は、一種の破壊作業です。試験機の利用は安全上の対策も考えます。強制的に変位を加えていき、そのときの反力を測定する方法で荷重の大きさを計測します。変位を加える装置として、普通、油圧ジャッキが使われ、油圧を計測して荷重に直します。機械的にネジを締めて変位を加える試験機もあります。荷重の大きさを精度よく測る方法に工夫が必要です。錘を順に増やしていく載荷方法は、錘の重量が正確に分かりますが、連続的な秤量が得られませんし、危険になったときに錘を除く操作が間に合わなくなることがあります。実物の橋梁の耐荷力を検査するため、重量車を載せる方法もあります。しかし、一つ間違うと歯止めの利かない崩壊を招きます。石橋を叩くと言う諺の裏に、この危険が意識されています。以前は、荷重を台秤の原理で測る装置もありましたが、操作性が劣ります。アムスラー式は、油圧を正確に制御し計測する方法に独特の工夫があります。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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