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8. 剪断応力度に関する特殊な問題

8.1 曲げを受ける梁の剪断応力度によるソリ


8.1.3 数値計算の例題と解説

 剪断遅れの計算は、理論モデルを仮定した実用的な公式を提案することができません。その理由は、断面形状のパラメータが複雑だからです。剪断応力度を計算するとき、それが板要素のどちらを向くかの判断は、断面図形を見て結果を作図して確認しなければなりません。仮に、標準形状、例えばH形など、を使うことに限定すれば、代数式を提案し、計算手順をプログラミングすることができます。しかし、少し形状を変更すれば、個別の断面ごとに毎回プログラミング文を変更しなければなりません。したがって、汎用のプログラミング言語を使うコンピュータを利用するよりも、卓上計算機を使う手計算で作業を進めることが普通でした。この作業は、表計算ソフト、例えばMS-EXCELなどの利用が便利になりましたので、手計算の感覚で計算手順を組み立てる(プログラミングする)ことができるようになりました。この場合、何かの見本になる例題を使って、プロトタイプ的なプログラミングがあると、分かり易いでしょう。以下の例題は、電卓を使ってまとめました。この例題計算は、そっくりMS-EXCELで、組み立てることができますので、ユーザレベルで挑戦してみて下さい。計算例に使った薄肉断面は、第7章、図7.3に示したH形鋼モデルを上下非対称にしました。上下対称の断面を扱うと、計算処理がずっと簡単になりますが、教材に使うことを考えて、敢えて上下非対称な断面を例題にしました。剪断力は上下方向に作用する向きで計算しました。数値計算を進めるとき、計算結果を簡単な見取り図に描いて、視覚的に確認をします。これは手作業ですので、結構な手間が掛かります。MS-EXCELで作業を進めるにしても、図の作成と貼り込みは、数値計算とは別作業です。このような面倒さがありますので、具体的で丁寧な計算例は参考書に紹介されることは殆どありませんでした。なお、電卓で計算するとき、或る個所で四捨五入した数値を次の計算に使いますので、数の丸めで見掛け上の誤差が出ることに注意します。MS-EXCELを使えば、式を正直に計算し、正確な数値は裏に保存されています。数をモニタに表示するとき、また印刷出力の場合にも、適度な丸めの書式を指定することができます。数値の表現と単位系をどのような書式(フォーマット)にするかは、計算をする人の工夫が反映されますので、それなりに興味を持って計算書を観察するのがよいでしょう。(例題は次ページから)
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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