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5. 弾性的性質の数学モデル

5.2 線形弾性として扱う便宜的な方法


5.2.1 材料は品質管理されて提供される

 材料の力学的な性質を、実験を含め、学問的に研究する態度は重要です。その結果を利用して部材の設計に応用したいときは、なるべく単純化したモデルで提案する態度に切り替えます。その代表的な扱いに、弾性係数(ヤング率)があります。理想的な弾性体は、応力度と歪みとが比例するモデルを考えます。これは、弾性係数を定数で扱う線形の数学モデルです。実際の材料は、実験を詳細にすればするほど、線形の仮定からのズレが観察されます。鋼材はまだしも、人工の石材であるコンクリートの弾性的性質は、様々な現れ方をしますので、これから設計・建設したい構造物の弾性的な性質を見積もるときに困ります。そのため、コンクリート材料は、力学的な性質を予測できるようにする品質管理技法の研究に多くの努力が払われてきました。捉えどころのない材料の性質を、客観的で具体的な数値データで扱えるようにするには、欧米の合理主義的な考え方が必要でした。その成果として、現在では、生コンクリート工場のように、品質管理をコンピュータで制御する円熟した技術が使えるようになりました。これは技術の発展として喜ぶべきことですが、一面で、全体がブラックボックス化して、技術知識の空洞化にもなっています。したがって、教養として、この全体についての技術史的な知識を埋めておく必要があります。材料力学の視点に話を戻すと、予定される材料の、特に弾性係数の表し方を理解する必要があります。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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