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4. 論理学の応用場面

4.1 自然言語処理の課題


4.1.2 日本語ワープロの開発の経緯

 1970年代までの日本の一般企業は、機械式の報文タイプライタが必須の事務機械でしたが、事務処理のコンピュータ化には最大の障害でした。日本語ワードプロの原点は、1978年、漢字の印刷ができる東芝のJW-10です。これが実用機に育った背景は、ハードウエアとしてドットマトリックスプリンタが開発されたことです。ソフトウエアの機能を支えたのは、仮名漢字変換です。それと関連して、自然言語処理が注目されるようになりました。この研究は、学問的に扱う態度と、応用を意識して技術を研究する態度との二つの面があります。人間が日常的に使っている言語は、長い歴史の流れの中で、自然発生的に正しい話し方と書きかの約束、つまり文法が決まってきました。しかし、実社会では、文法に忠実な言葉の使い方に束縛されない表現法が大勢を占めます。これを自然言語と言うようになりました。学問的な態度は、この自然言語の使い方にも、何かの法則性があるのだ、とする信念があります。学問としての言語学がそうです。実際の人間社会では、場面に応じた種々の変った書き方や話し方が使われ、多くの曖昧さを持ちます。この人同士の中間にコンピュータを介在させ、翻訳などに利用すると、必ずしも正しく情報が伝わらないことが起こります。その理由を、分析し研究するのが、自然言語処理の学問的態度です。この研究は、文法規則の例外が多いこともあって、焦点を定め難い面があります。これにデータベースの手法を応用し、それを発展させた知識ベースにまとめることで、人工知能の研究へと繋がるようになりました。コンピュータ側に立って言語学を見る分野をコンピュータ言語学(計算言語学:computational linguistics)と言います。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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