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4. 論理学の応用場面

4.1 自然言語処理の課題


4.1.3 自動翻訳開発に起こる問題

 英語は、単語の分かち書きをし、単語の並び順に規則があります。したがって、英単語を品詞単位で日本語の単語に当て、語順を調整すれば、かなりの程度で正しい意味が分かります。歴史的に見れば、漢文訓読法は、一種の中国語の翻訳法です。この場合には、漢字の単語をそのまま生かし、日本語の語順に合わせるように、レ点や返り点などを補います。英文から日本語への翻訳も、単語単位での翻訳に加えて、原理的には語順の入れ換えをします。不思議な言い方になることもありますが、意味は正しく理解できます。しかし、どの言語であっても表現の曖昧さと、単語の意味の多様さがありますので、とんでもない誤訳も起こります。人が文を読むときは、その人の属する社会や専門の知識を補って正しい意味を選択できます。しかし、コンピュータを介して自動翻訳をさせたいとするとき、膨大な知識ベースの助けを借りる必要があることが分かってきました。そうであっても、すべての文章の解釈を明快に解決することはできません。曖昧さ自体を学問的な方法で扱おうとすると、出口の無い迷路に入ってしまいます。自動翻訳を技術的に処理させることを考えるときは、妥協の道を探ります。その一つの方法は、元の文を自動翻訳に向くように作文、または添削しておくことです。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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