目次ページ; 前のページ; 次のページ

実用文書作成の演習

Exercises of Practical Writing


演習A:タイピング練習のヒント


A0. あらまし

 文書を作成する最も基本的な作業は、手書きです。達筆ではなくとも、綺麗な字が書けるお習字の素養は、弁えておきたいものです。現代は情報量が多くなりましたので、文書全体の扱い易さを目的とした、機械的な文字入力装置を使って文書原稿を作成しなければ、仕事になりません。その道具として、タイプライタは必須の事務用品です。この装置の開発と工夫の歴史は興味のある話題です。欧文の場合は文字の種類が多くないので、いわゆる英文タイプライタが使われてきました。日本語では、普段使う漢字の種類だけでも2000字を超えますので、邦文タイプライタは特殊な事務用品でした。コンピュータを使って文書の作成から管理までをしたいときの必需品が、ワードプロセッサです。その文字入力は、ハードウエアとして、英文タイプライタのキーボードを利用する方法が一つの標準になりました。ソフトウエアは、キー入力と関係して開発が進みました。プログラミング作業との関連から、英字を入力し、それを仮名に直し、さらに漢字に変換する三段階の方法が普通になりました。庶民レベルでの利用は、例えば銀行のATM画面で見るような、仮名50字並びのキー配列もあります。パソコンのキーボードでは、英字キーの並びに仮名文字を当てる方法も使われます。英字と仮名漢字と両方を使うときは、英字用のキー配列での使い方で覚えておきます。この文字入力の操作方法が、この章の標題にあるタイピングです。因みに、日本語ワードプロセッサでの文字入力の速度を競う場合には、仮名入力の方が早くなります。仮名一文字のキー入力は、ローマ字入力では二文字のキー入力になるからです。

 タイピングに習熟するには、技能教育が必要です。以前、商業学校では機械式の英文タイプライタの使い方を教える教科があり、女性にはタイピストとしての技能を持たせる目的がありました。また、タイピングを専門に教える街中(まちなか)の技能学校もあって、基本的な正しい使い方を教えてくれました。タイピングは、個人の責任で覚える技能です。自己流で覚えることもできますが、正しい使い方を覚えたいものです。しかし、案外なことに、系統的な教育環境としての扱いに欠ける面があります。どこかで、この穴を埋めておきたいものです。


前のページ; 次のページ