1.6 鉄筋コンクリート矩形梁の応力計算

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 鋼とコンクリートの合成された構造物の応力計算は、材料をどちらかの断面に換算して、一種類の断面材料として計算するのが実践的な方法です。鉄筋コンクリート断面の場合には、鉄筋断面積をn倍してコンクリート断面に換算します。鉄筋の応力は、コンクリートの応力として計算される値をn倍します。合成桁のように鋼桁が主体である構造物では、コンクリートの断面積の方を1/n倍して鋼断面に換算します。圧縮側のコンクリート断面に鉄筋が埋め込まれている場合、コンクリートの断面から鉄筋断面を控除し、鉄筋断面積をn倍して加算するのが理屈です。したがって、鉄筋の寄与率は、厳密に考えれば(n-1)倍にするべきなのですが、nと(n-1)との相違を神経質に区別することをしません。その理由の一つは、鉄筋比pが1%程度であるためです。

 鉄筋コンクリート断面の応力計算では、引張応力を受けるコンクリート部分は無いものとして断面係数を計算します。このとき、中立軸の位置xを求めることが問題を複雑にしています。最も簡単な場合が、曲げモーメントを受けるだけの単鉄筋矩形梁です。中立軸の位置は、断面一次モーメントの釣り合い条件で求めますが、xの二次方程式を解くことになります。鉄筋比pをパラメータに使い、k=x/dの形で中立軸を求める計算式が式-7です。もし軸力と曲げモーメントとを受ける場合にはxの三次方程式を解かなければなりませんので、xを求める代数式を一意に提示することができません。この計算には、カルダノの方法のような代数式を使うよりも、パソコン利用では繰り返し計算で収束計算をさせるNewton法を応用するのが便利です。

 複鉄筋矩形梁に曲げモーメントが作用する場合の中立軸の位置は、1段配筋ならば実用計算に利用できる代数式を導くことができます。これは式-7と似た次の式になります。
      . . . . . . . . (11)

 曲げを受ける梁の応力計算は、応用力学の基礎的な関係であるσ=(M/I)yの形です。ここにIは断面二次モーメント、yは中立軸からの距離です。鉄筋の応力は、その位置のコンクリート応力をn倍します。複鉄筋矩形梁の場合、引張応力を受けるコンクリート部分は無いものとして計算した断面二次モーメントIの表式を下に示します。
             . . . . . . . . (12)

 中立軸の位置を求める式-11で、p'=0と置けば式-7と一致します。同じように式-12でAs'=0とおけば単鉄筋矩形梁の曲げ応力の計算式になります。なお、設計実務では、断面二次モーメントIではなく、K =I/yの断面係数の形に整理し、σ=M /Kの形にして利用します。


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