1.5 配筋の設計
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前節までの計算で求めた所要鉄筋量は理論値です。したがって、理論計算値に近くなるように鉄筋径・本数・間隔(ピッチ)を提案しなければ設計とは言えません。実用される鉄筋径は飛び飛びの寸法ですし、鉄筋配置の最小純間隔・カブリ・アキなど、構造細目上の制限[2]があります。鉄筋は呼び径で呼ばれますが、実径とは少し異なるのが普通ですし、実際の断面積も必ずしも呼び径を元に計算した値ではありませんので、カタログ数値を引用しなければなりません。これらの標準的な数値は、データとしてプログラムに組み込んであります。入手可能な鉄筋などのカタログは、鉄鋼メーカーのホームページなどで確かめることができます。
設計作業のコンピュータ化においては、式(1)〜(8)のように代数式で与えられた性質を数値計算させるプログラミングは比較的簡単です。しかし、配筋設計のように、鉄筋直径が飛び飛びの離散的な数値データで与えられるような場合は、一意に解を提案できませんので、論理的な思考の組立てが重要です。配筋の設計では、下に示すような手順を考え、これを踏まえて会話型のプログラムに構成します。
- 採用する鉄筋の最小と最大の径を決めます。デフォルト値で最小径は10 mm、最大径は32 mmなどのように決めておきます。
- 構造細目上のカブリとアキの制限を勘案した寸法を決めておきます。実際構造は鉄筋との隙間の寸法を規定するのですが、計算上の数値は、鉄筋径の心から測る寸法を使います。コンクリート表面から鉄筋表面までの寸法がカブリなのですが、デフォルト値として10cmのように決めておきます。これは実際のカブリに鉄筋径の1/2を加算した値ですので、後で補正します。
- 版の場合、主鉄筋が最外側に来て、その内側に配力筋を置きます。桁の場合にはスターラップが主鉄筋を囲みますので、スターラップの鉄筋径を加えた分だけ仮のカブリ値を大きく仮定します。
- 隣接する鉄筋の水平間隔はアキです。計算に利用する数値は物差で測れる中心間隔(c to c)です。最小間隔と最大間隔とが必要です。このデフォルト値は、例えば10 cmと30 cmとします。実際のアキ寸法は端数が出ますが、管理上の最小アキが満たされているかの確認が必要です。
- 大きな鉄筋断面積が必要になるときは、2〜3本の鉄筋を束ねたものに置き換えます。
- 矩形梁の幅bを決めれば、上の値を使ってその幅に入る鉄筋の最大・最小断面積が決まります。計算上の断面積がこの範囲にあることを確かめます。
- 矩形断面が設計曲げモーメントに対して余裕があっても実際構造は最小断面積を満たす程度の鉄筋を使う必要があります。
- 計算上必要な鉄筋断面積が上記の最大断面積以上になるときは、上下2段に配筋します。この上下の鉄筋のアキも、計算上はデフォルト値で10cm程度に決めます。2段配筋の場合、2段目の鉄筋が断面剛性に寄与する能率は1段目よりも下がることを念頭に入れておきます。
- 2段の配筋でも計算上必要とする断面積に足りない場合は、遡って、断面そのものの幅と桁高との選び方が不適切でことになります。通常は高さが不足することが多いので、断面設計をやり直します。T型梁や、箱断面の選択肢もあります。
- 計算上必要な鉄筋断面積を満たすように実際寸法の鉄筋径を決めた後でカブリの寸法を使って鉄筋の位置を補正します。応力度の検証は、採用を決定した鉄筋の寸法と配置とで行います。
- なお、設計計算は、与えられた設計外力に耐える必要最小限の材料を提案しますので、応力に余裕があっても、細部構造として要請される最小材料まで省くことはしません。
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