1.4 梁の高さを決めて梁の幅を算定するなど
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設計理論には学問的には種々の提案がありますが、実用的には線形の弾性理論を応用するのが主流です。その理由は、応力と変形の計算に重ね合わせの原理が保証されるからです。非線形の弾性理論を使うと、例えば、荷重が倍になれば応力も倍になるという単純な比例関係が成立しませんので、個々の荷重状態で計算を独立に計算しなければなりません。影響線を使う設計方法も使えません。コンクリート材料は、圧縮と引張とを含めた応力・ひずみの関係が折れ線の仮定になりますので、設計理論は非線形の性質があります。このことが鉄筋コンクリートの設計方法を複雑にしています。しかし、引張側のコンクリートが無いものとする条件では線形の性質が利用できます。前節の複鉄筋の設計方法も、原理としては重ね合わせの原理を踏まえて提案されたものです。
断面設計の場合、種々の重ね合わせのテクニックを利用します。その考え方の一例を説明します。この場合、1.1節の表3の分類を参照して下さい。
- まず、設計モーメントが与えられたとして、幅bを仮定して桁高と鉄筋量とを求めます。これは表3の(1)のケースです。
- もし桁高に予定値があるなら、どれだけの幅bを考えればよいかの計算が(2)です。この場合、下の式-10ように単位幅(100cm)当たりの抵抗モーメントと鉄筋量を求める計算式を使います。
. . . . . . . . (10)
- 最初から矩形断面の幅と高さとが決められていることがあります。この場合、単鉄筋矩形梁としての抵抗モーメントM0(鋼構造では、この概念を表す用語を全強と言います)を計算しておいて(4)、設計モーメントと比較します。式-10から、与えられた幅の梁の全強モーメントと、その場合の鉄筋量が計算できます。
- 設計モーメントM が全強抵抗モーメントM0よりも大きければ、複鉄筋として設計します(5-2)。ただし、鉄筋量が多くなる場合には、桁高を増やすか、幅を増やすかの対応を考えます。鉄筋量の目安をつけるのは施工性などの経験によって決めます。物理的な限度としては、鉄筋比pを2%以下に抑えること、鉄筋の最大径と最小ピッチ値とで決まる一段当たりの最大鉄筋使用量の限度などを勘案します。
- 設計モーメントM が全強抵抗モーメントM0よりも小さければ、単鉄筋としての鉄筋量を減らすことができます(5-1)。この計算には、式-8の鉄筋の応力度を求める式を応用します。この場合、鉄筋の応力σsを定数の許容応力度にしておいて、鉄筋の断面積Asを減らして設計モーメントを満たすようにします。全強モーメントに必要であった鉄筋量を減らすと、中立軸の位置が上に上がり、jの値も変わりますので、鉄筋量を計算する式は簡単な代数式としては提案できません。コンピュータが利用できるようになりましたので、これは繰り返し計算で求めることができます。その方法は単純です。まずjの初期値を全強の場合の値にして、式-8を応用してM からAsを計算します。この鉄筋量pから、式-7と式-4を使ってjを計算し直します。この値を前の計算で使ったjと比較します。この差が大きければ新しいjを使って鉄筋量を計算し直します。
- 鉄筋量は最大曲げモーメントの箇所で計算しますが、曲げモーメントが小さくなった箇所でも最小限の鉄筋を残す必要があります。実践的には、最大主鉄筋本数の1/3です。抵抗モーメントからの縛りは決まっていないようですが、全強の70%の抵抗モーメントが一つの目安です。
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