11章 幾何モデルの図形特性の計算

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11.1 マス・プロパティとは

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三角形の面積は重心位置の計算は初等幾何学で習います。物体の運動を扱う力学では、物体の体積・重心・慣性能率(モーメント)などの大きさを計算しておく必要があります。これらを、英語ではマス・プロパティ(mass property) と総称します。設計計算においては、平面図形の面積・体積・重心・慣性モーメントなどの計算を必須とします。材料のコスト計算はその体積を元にして求めます。これらの計算は一種の統計計算のように、図形全体の代表値(アブストラクト)の計算に相当し、幾何モデルの図形特性と呼ぶことにします。実際の設計実務においては、多面体モデルのような立体図形の体積や重心位置を計算することは、CADのひとつの応用として現実的な必要性があります。

平面図形を扱う断面特性の計算については、設計上の実用的な計算法がほぼ確立されています。立体的な形状の図形特性の計算では、計算条件が平面図形の場合よりもはるかに複雑になりますので、近似的な算出を除けば、計算機で計算させるまでのデータの準備に多くの手間がかかります。GEOMAPでは、立体図形を多面体として合成しますので、マス・プロパティの計算も三角形や四面体の集合として計算しています。

GEOMAPのコマンド群のうち、英字のJで始まるコマンドは、図形特性を計算するシリーズです。コマンドJPVOL は、多面体モデルから、体積・表面積・重心位置・慣性モーメント・3つの主軸の向き、を計算し、これらを名前で参照できるように、まとめてリストセル(JCELと呼びます)に保存します。コマンドJRVOL は、同じように平面図形の図形特性を計算します。これらの数値を利用するには、次節に示すように、第10章と似たQUERY用のコマンドを呼びます。コマンド名は、QJ... のようにつけてあります。幾何モデルは、第3章と第7章で解説したような足算、引算、掛算ができますが。図形特性についても、足算(JUNI)、引算(JSUB)、掛算(JFACT) のコマンドを用意しました。幾何モデルのコピーと消去のコマンドは COPY、 CDEL で行ないますが、図形特性のセルではJCOPY, JDEL を使います。これは、データ構造の作り方が幾何モデルとは異なっていますので、同じコマンドが利用できないためです。


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