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24. 幾何の計算に使うプログラミング

24.2 プログラミング言語の習得


24.2.2 BASICインタプリタの環境が便利であったこと

 1970年代末から発売されたNEC-PC8001に代表される8ビットのマイコン(micro computer)が爆発的に普及した理由の一つは、電源を入れると直ぐに使えるBASICインタプリタの使い勝手が良いことでした。インタプリタとは、文字並びを解読(翻訳)して直ぐに実行するコマンドを集めたプログラムです。基本的な数学関数に加えて、特に新鮮であったのが、文字処理関数とグラフィックス機能でした。その後継機である16ビットパソコンPC98シリーズも、機能を強化したBASICインタプリタを使うことができました。しかし、マイコンを教育や研究利用に使うことを、低位に見る傾向がありました。科学技術計算は、専門ごとに固有の問題があり、単純な計算から複雑な計算までの種類が多様ですので、実際には種々の計算道具を使い分けます。これには3つの段階がありました(過去形に注意して下さい)。最も単純な道具が@関数電卓、AマイコンのBASICインタプリタが次善の道具に位置づけられ、その上にB大型計算機でFORTRANを使うプログラミング環境がありました。パソコンのOS(オペレーティングシステム)が16ビットよりも上位の32ビットプロセッサを使うWindows系に変わったことが一つの転機となって、Visual Basicは、BASICを標榜していても、高級言語の機能を取り入れた高度に専門化された、コンパイル形式のプログラミングツールに変わってしまいました。また、大学の計算機センターのようなFORTRANの利用に便利な環境も無くなってしまいました。つまり、関数電卓の利用に次ぐ、多様な目的に段階的に対応できる便利さを持ち、科学技術教育の目的にも使える中間ツール以降が壊滅してしまったのです。先人が、PC98シリーズで開発したソースコード、更には、FORTRANで構成された膨大なライブラリ資産を引き継ぐ環境が無くなったのも、大きな損失です。
2009.12 橋梁&都市PROJECT

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