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18. 平面図形諸量の合成

18.1 図形構成の手順


18.1.6 EXCELを応用した計算例とその解説

 複数の構成図形から、面積だけでなく、密度を考えた重心位置・二次モーメントなどのマスプロパティを数値計算する実践的な技法は、教科書で詳しく説明することはありません。計算理論は単純ですが、検算を容易にするための書式は、実務的には表形式にまとめる定型があります。この計算には、表計算ソフト、例えばEXCELを便利に使うことができるようになりました。次々ページを見て下さい。表18.2は、構造計算書の一例です。エクセルのセルには、書式と体裁とを持たせる表(おもて)の顔と、計算式を埋め込む裏機能があります。この計算例は、部材要素に矩形断面で考えた鋼板と山形鋼とをリベットで綴じ合わせて桁断面を合成し、応力計算までを示したものです。
  • 図形のy座標を仮に桁高さの中央に置いて、面積・一次モーメント・二次モーメントの計算を行方向に並べます。
  • 断面要素ごとの重心周りの断面二次モーメントは、右端にIの欄に入れます。そこに代入する数値は、表18.1で計算します。任意形状の図形は、別に断面諸量を計算しておいて組み込みます。ここでは山形鋼を使っていて、ここにカタログ数値を使います。
  • リベット構造の場合、引張応力が作用する側のリベット穴を有効断面に算定しない約束にしますので、これは平面の断面図形では穴に当たり、負の面積にしてあります。
  • コンクリートと鋼との合成断面は、どちらかを1の密度とし、他方の密度を求め、それを面積に掛けます。例えば、全体をコンクリート断面に換算するときは、鋼断面をn(7〜15)倍します。逆に鋼断面に換算するときは、コンクリート断面を(1/n)倍します。
  • 桁断面全体の重心位置(e)の計算は、一次モーメントの和から計算し、それを元に、桁断面の重心周りの二次モーメントに補正します。
  • 重心位置を基準として高さ方向のパッケージ寸法に相当するのがyt, ybです。二次モーメントとパッケージ寸法から計算した、記号としてZを使った数値を断面係数と言い、設計計算では断面積と並んで使う重要なマスプロパティです。構造用鋼材のカタログには、必ず載っています。英字記号の約束はWと使う場合もあります。
  • 断面係数は、設計モーメントから断面の縁応力度を計算するときに、σ=M/Zと計算する形で使います。軸力を受けるときの応力が、断面積からσ=P/Aの形で計算することと、式の表現が揃います。簡単な応力計算で曲げモーメントの値が求まっていて、許容応力度も仮定されているとき、所要の断面係数は、Z=M/σとなりますので、その断面係数を満たす部材をカタログから選ぶ、などの使い方をします。カタログには、この他に回転半径なども載っていますが、その意義と使い方などは材料力学で習います。
  • 例題の断面構成は、左右対称です。ここでは水平軸回りの二次モーメントの計算だけを例示しましたが、垂直軸回りの二次モーメントの計算も同じ形式でまとめます。対称軸を持たない形状の場合には、相関モーメントの計算をする必要もあります。実務の計算では使うことがありませんが、教育課程で取り上げる価値があるでしょう。図16.9に例示した不等辺山形鋼の断面係数や主軸の計算をしてカタログ数値と比較するのは、数値計算の良い演習になります。
2009.6 橋梁&都市PROJECT

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