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15. 隠れ面と隠れ線処理

15.5 多面体の投影図


15.5.1 多面体の正確なデータを準備すること

種々の隠れ線・隠れ面の作図例
 複雑な形状の立体図形の投影図を作成するときは、元になる図形を表す何がしかの幾何モデルを仮定します。前の二節は、やや特別な条件の場合のモデリングです。一般的に立体図形を扱うときは、すべての構成面が幾何学的な平面の条件を満たす多面体でモデリングします。GEOMAPは種々の目的に使えるように多面体データを構築します。投影図に作成するときは、立体図形から平面図形に変換してから作図させる、二段階の過程を経ます。しかし、単純に図を描くだけであれば、平面図形に作成する過程を省くこともできます。図15.5.1〜図15.5.9は、一つの多面体を種々の方法で作図した例を示したものです。個別の作図例について、以下に解説します。データ構造はすべて同じですが、角柱・角錐の構造の場合と、これを円柱・円推の近似モデルとして扱う場合と、が比較できるようにまとめました。
  • 図15.5.1:多面体の辺だけを単純に線図として作図した例です。コマンドHEDISPを使います。幾何モデルとしては、骨組み構造(ワイヤーフレーム)を作図したことになります。線が錯綜して立体感が得られません。線の奥行き関係を表すように、手前の辺が奥側の辺を分割し、交点の個所で僅かに隙間が空くように作図する方法もあります。ここでは、この作図例を省きました。
  • 図15.5.2:この幾何モデルは、角を持たせた角柱・角錐の重ね合わせを表しています。最初は簡易隠れ線の技法で作図した辺の作図です。コマンドHFDISPを使います。多面体を構成する辺は、その両側に面が繋がっています。二面が共に視点側を向いていれば、この辺は「可視」の属性を持たせます。二面が共に視点の反対側向きであれば「不可視」の属性を持たせます。二面の一方が視点側を向き、もう一方の面が反対側の場合には、二面の交差が凸の場合、この辺は「可視」、凹の場合は「不可視」の属性を持たせます。「可視」の属性を持つ辺だけを作図すると、簡易な隠れ線処理をした投影図が得られます。ただし隠れ面処理をしていませんので、本来見えなくなる辺も描きます。
  • 図15.5.3:上の場合と同じですが、不可視の辺を破線で作図してあります。コマンドHFDISPを使うのですが、不可視の辺を描く線種を破線に指定することで得られます。この線種に実線指定をすると(1)と同じワイヤーフレームの作図が得られます。
  • 図15.5.4:完全な隠れ線と隠れ面処理をした投影図です。コマンドHLDISPで描きます。このコマンドは、作図に使った図形データは保存しません。このコマンドの特徴は、見える辺が手前の面で隠されているとき、その裏側に入る個所で僅かに間隔を空けてあることです。このようにすると、その辺が相手側と接続していないように見えますので、立体感を与えることができます。
  • 図15.5.5:この例図は二段階で作図したものです。最初、HMIMAGで完全隠れ線・隠れ面処理をして平面図形モデルに変換します。このモデルは地図モデルになっています。HLIMAGでは、手前の領域の辺は連続したデータ構造になっていますが、地図モデルでは裏側に入る辺との交点で区切ります。したがって、立体感を与える視覚情報はなくなっています。コマンドHDISPは地図モデルの作図用です。
  • 図15.5.6〜図15.5.9:円柱・円推など、曲面を持った構造は、角柱・角錐などで近似させたモデルを使います。これらの図は、図15.5.2〜図15.5.9にそれぞれ対応していて、曲面を持つ場合の作図例です。曲面の境界に当たる辺は、「曲面を近似する」と言う情報を持たせ、「可視」の属性であっても作図しないことで視覚的に曲面であることを意識させます。しかし、全体図形の外形線になる辺は実線で作図させます。
  • 2009.3 橋梁&都市PROJECT

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