目次ページ  前ページ  次ページ

6. 幾何モデリングの序章

6.2 立体を表す幾何モデル


6.2.3 幾何モデルを何に使うのか

 仮に、何かの立体的な形状の幾何モデルをコンピュータに協力してもらって作成したとして、このモデルを何に使うのか、の目的意識が必要です。実を言うと、幾何モデルの構想が最初にあったのではなく、手描き製図の補助にコンピュータを使いたいとする目的が先にありました。プロッタのペンの動きを制御することは工作機械のコンピュータ制御と同質なところがあります。そこで、製図と製作とで形状のデータを共通に利用するアイディアが育ち、このデータを形状モデルと言うようになりました。製図に注目すると、図を描く順序を指示する言語セットが必要です。これがグラフィックス言語です。しかし、例えば、四角形をプロッタで描かせるときは、線を引く順序はどうでもよくて、「四角形を作図しろ」と言うことで済ませます。そして、「四角形」という図形単位が幾何モデルです。複雑な形状を作図したいとき、作図のデータを考えるのではなく、単純な形状を組み合わせてその形状を構成する方法を考えます。これを英語(アメリカ英語)の動名詞形のmodeling(イギリス英語ではmodelling)を使って、幾何モデリングGeometric Modeling)と言うようになりました。今度は逆に、何かの幾何モデルを作成できるツールがあったとして、それをどう使うかに応用の焦点が移ります。最も華やかな分野がコンピュータグラフィックスです。CAD/CAMへの応用は、一般の人には眼にしませんが、物造りの現場では必須のツールです。構造設計に応用するときは、「重心位置・面積・体積・慣性モーメント・主軸方向」などの計算があります。こちらへの応用は、言わば幾何学計算の本流ですが、今まではあまり評価の対象にはなっていませんでした。
2008.6 橋梁&都市PROJECT

前ページ  次ページ