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5. 土木工学と曲線

5.1 地球の上の作図


5.1.1 東西南北を正確に合わせる

 何も目印が得られない広い運動場で、正確に地球の東西または南北に合わせて、真っ直ぐな徒競走用の線を引いて下さい、と頼まれたとします。南北方向を太陽の南中で見当を付ける方法は、少し精度が落ちます。北半球ならば北極星に合わせる向きで、或る離れた距離に目印点を決めれば、実用的に十分の精度を持ちます。正確さが必要であれば、測量用トランシットなどの道具を使い、夜間に北極星を観測して真北を求めますので、素人作業には少し手に余ります。GPSを使うことを思い付くでしょうが、かなり専門的な装置です。地球規模の経緯度で位置を教えてくれますが、方位は2点の位置の計測値を元にします。GPSが使えなければ南北方向も決められないのでは困ります。このような基準となる線を決めることは、意義的には局所座標系を設定することです。この作業は、狭い範囲とは言え、地球上に幾何学的な図形を引く作図です。起点から目印点を目視で結ぶ線上に、適当に中間点を決め、巻尺で長さを設定します。南北線と正確に直交する東西向きの線は、巻尺をコンパスのように使って、初等幾何学の原理で決めることができます。場所的に狭い個所は、ピタゴラスの定理を応用して、巻尺をコンパスのように使って、3:4:5の長さ比の三角形を作図して直角を出します。また、陸上競技の半円形トラック走路も、コンパス応用で円弧上の点を順に決めることができます。この程度の地球上の作図であれば、小学生でも面白がって手伝ってくれます。或る高さから見なければ全体が分からない大きな人工的な図形の例は、南米ペルーのナスカの地上絵が有名です。何かの設計図を元に、それを拡大して地球上に造形する技術全体の研究が土木工学です。
2008.5 橋梁&都市PROJECT

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