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3. 図形要素間の演算

3.3 代入文の解釈


3.3.1 数学の等式とは意味が違うこと

 初等幾何学の作図の公法は、定木を使って直線を引くことと、コンパスを使って円を描くこと、の二つです。直線を引くためには2点が必要です。また、円を描く場合にも、中心点と半径長さを決めるための補助的な点が必要です。作図操作の目的は、直線と直線、直線と円、円と円、の交点を求めることです。新しく決まった点を使って、さらに別の点を決めていく操作を繰り返します。この操作を計算幾何学的に見ます。どこかの位置に点を描く(点を打つ)ことは、点の座標を決めることであって、点の変数に座標値を代入することです。線分を決めることは、2点のデータを線分の変数に代入します。無限に伸びる直線にしたいときは、2点のデータから直線の式を求めておいてから代入します。直線と直線は、並行でなければ、どこかで交わります。しかし、「交点を求める」と言うときは、明確な意思表示をして交点の座標値を計算し、点の変数に代入します。これらの複合した処理を、一つの代入文(assignment expression)で書く約束を考えます。代入文は、「=(イコール演算子)」を使う約束が便利です。プログラミング言語で使う代数式の習慣に倣って、変数名を「A=B」のように書きます。この表現は、右辺と左辺とが等しいとする代数学の約束とは異なっていて、右辺のデータの性質を左辺の変数が取り込む操作を表します。矢印記号(←など)はキーボードのフォントにありませんので、<=も考えられますが、大小判定の記号と衝突します。代入文では、何がしかの計算と変換が行われますので、この約束を最初に決め(定義し)ます。
2008.3 橋梁&都市PROJECT

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