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1. 座標系と長さの概念

1.2 座標系の約束


1.2.2 住所表記も座標系の概念を踏まえていること

 住所を表すときも、座標系の概念が使われます。こちらは地球規模での世界座標のローカル表記の意義があります。点としての位置ではなく、領域単位の位置を表します。日本では県名・市・区・町などの順に並び、より細かな番地番号を続けます。欧米では日本とは逆順に書く習慣です。また、欧米では道路に沿って番地が振られるのですが、日本では区画単位内で番地を振りますので、道路を挟んで町名や番地が連続しないことがあります。道路を基準として住所を表記する方が分かり易いのですが、日本では道路名をニックネーム的に使っています。日本の地形は山や川が入り組んでいますので、地形の特徴を取り入れて場所名を特定する習慣があります。オーストラリアの内陸部のように、目印になる地形が乏しい広い場所では、何かの基準を決めて座標を考えます。地球規模で考えるときは緯度・経度を使います。現在ではGPSの恩恵を受けられますが、それが使えなかったときの計測法は常識として覚えておくべきです。緯度の方は、日本では北極星の高度を測定すれば物理的に求まります。東西方向の経度は、イギリスのグリニッジ天文台を経度0の基点とした人為的な相対座標です。自分の位置の経度を知る伝統的な方法は、正確な時計を使った天測を必要とします。目印のない洋上の船舶の位置は、六分儀を使う天測で計測します。日時計を作るときは、その場所の緯度・経度と、その地域の標準時を決めている経度との差を考えなければ正しい時刻表示になりません。いつも緯度・経度を使うのでは生活の場では不便ですので、便宜的な種々の座標系を使い分けます。このとき、やや大枠の基準座標系を世界座標系(world)と決めておいて、場面ごとに局所座標系(local)を使い分けます。
2008.1 橋梁&都市PROJECT

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