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1. 座標系と長さの概念

1.1 初等幾何学での作図


1.1.1 作図法の公理は二つしかない

 中学・高校で習う初等幾何学は、図形の性質を扱うときに、大きさを表す長さの基準を捨象します。幾何学の図形は、正確に作図できることを条件とします。作図の公法(公準とも言います)は、定木とコンパスだけを使うことに制限しています。古典的な幾何学は、実際に図形を描くことを省いて、言葉だけで論理的に説明するように組み立てた学問です。例えば「三角形の三頂点から対辺の中心を結ぶ三直線は一点で交わる」のように、言葉で表します。その言葉通りに、実際に図形を描く方法が作図法です。しかし、その説明に使う図は、いいかげんでも済ますことができます。このことが、幾何学を応用する技術に深入りしようとしない原因にもなっています。作図法で使う論理的な定木は、直線を引くときだけに用い、目盛りを利用して長さを測る使い方を許しません。そのこともあって、用語として「定規」に代えて「定木」の方を当てます。普通のA3版程度の用紙に手書きで幾何学的図形を作図するときは、図の大きさや用紙上の位置などに頓着しません。しかし、印刷物などに使うイラストの作図では、用紙寸法に対する図の寸法と配置を考えます。コンピュータを使って指定された画面に作図させようとなると、この問題はずっと具体的になってきて、座標系の約束と長さの定義をしっかりと理解していないと混乱を起こします。正確に幾何学的な図形を作図しようとなると、実は非常に高度な技術を駆使しなければなりません。
2008.1 橋梁&都市PROJECT

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