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2. 日本語文書の構造

2.4 標準的な語順


2.4.2 直接目的と間接目的の語順

 他動詞は目的語を取ります。これが一つの場合と二つの場合があります。英語の文法を習うと、直接目的語と間接目的語の二種を区別します。助詞の「〜を」を付ける語(直接目的)が主です。「〜に」を付ける語が(間接目的)です。「犬に餌をやる」と言う句は、語順を変えて「餌を犬にやる」と言っても間違いません。英語は主語を必ず立てますが、主語なしの動詞句の構成で言う語順は、「give dog food」「give him dog」が標準です。日本語では「〜に〜を」の順と覚えます。「〜を」をとる語は、英語では文の最後に来ます。論理的に考えると、直接目的語は、なるべく動詞に近い位置にある方が自然です。英語は、目的語の語順を変えるとき「give food to dog」「give food to him」のように前置詞を補わないと、意味的におかしくなります。コンピュータ言語で、或るメモリの内容を別の場所に移すcopyやmoveの他動詞は、英語流の語順を誤解すると間違った処理になります。「move A B」の形で書いてあるのは、BをAに移すのです。物の動きと文の並びが逆順です。この英文を日本人が見ると、AをBに移すと誤解します。話の筋で直接目的のBを省くことができるとき、「moveto A」の表し方があって、グラフィックスのコマンドに見られます。代数式の「A=B」は代入文と言い、データの流れはBからAの向きです。処理の向きが移動対象と逆順になることは、英米人でも困るようでして、その分、文法書の定義がくどくなっています。
2010.2 橋梁&都市PROJECT

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