再現設計エクセルSoft-全体目次

エクセルSoftのプログラム目録

デモンストレーションプログラム

エクセルSoftの使い方

エクセルSoftの解説(橋梁と都市Project連載記事のHTML版)
(PDF 5.9MB)

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まえがき

 橋梁は公共構造物ですので、その設計・架設・維持・管理などに関する文書は、公文書の性格を持ちます。とりわけ、設計計算書と設計一般図とは、維持・管理に必要ですので、管理者側で、かなり詳細な資料を保存しておく必要があります。とは言え、これらの資料は、専門的な性格が強いこともあって、必ずしもすべてが保存されているわけではありません。設計計算にコンピュータが多用されるようになって、計算書のスタイルが、入力条件と計算結果のコンピュータリストを残すだけのものが増えました。設計方法の大衆化には大きな進歩でした。しかし、計算に使ったプログラム本体の記録が残りませんし、設計計算の経過が分らなくなっています(ブラックボックス化と言います)。このことが、設計計算書を再現するプログラム、エクセルSoftを提案する理由の一つです。

 詳細な計算書を残すまでもないと考えられていた理由は、一般図と準拠した示方書から、構造計算のあらましを再現できると考えられていたからです。しかし、材料の種類が多様化して、強度の異なる材料を組み合わせて(ハイブリッドで)製作されている場合、設計当時の示方書に沿って再現計算をして確認してみないと、材料の使い方が分りません。この計算は、設計当時の示方書の荷重体系を使います。平成14年の示方書から、力の表記単位にニュートン法を採用するようになりましたが、新荷重体系を使って耐荷力を比較するためには、応力度の表記単位を揃えた、または換算値を併記した計算が必要です。旧示方書に基づく計算書が残っていることも少なくありませんので、平成14年の示方書による確認計算の場合は、基本的に、数値を旧単位系に換算して計算するようにしました。

 科学技術計算に使うプログラミング言語は、以前はFORTRAN、最近ではBASIC系、C/C++系を使うことが常識でした。これらは一般的なWindows系パソコン環境で使うには特殊なツールです。計算書の作成に、エクセル(MS-EXCEL)を利用することが便利になりました。エクセルは、事務処理指向のツールですが、豊富な関数が利用できるようになったことと、印刷の書式と体裁とを画面上で確認しながら計算を進めることができますので、科学技術計算に利用する場面が増えています。エクセルSoftは、計算書の計算はもちろんですが、書式と体裁を整えたプリントを作成することに大きな目的があります。印刷領域は、A4用紙を縦位置に使うプリントで得られるように計画します。印刷領域以外のエクセルの作業領域は、説明や補助的な計算作業用に使います。したがって、計算書としての成果物を作成するだけのプログラミングツールには無い、計算作業環境が得られることがエクセル利用の利点です。設計計算書では、簡単なイラストを説明に使う必要があります。このイラスト作成は、やや特殊な作業を必要としますので、エクセルSoftではマンガ的な図を使っています。他の資料やソフトと合わせてパソコンを利用すれば、良い成果物に再編集することは難しくありません。

 保存を目的として作成する公文書をアーカイブ(archive)と言い、それを保存する図書館の名称にも使います。コンピュータ用語で使う場合には、一過性の作業用ファイルではなく、保存を目的としたファイルとそのディスクを含めた全体を指します。音楽のクラシックレコードに趣味のある人は、ドイツ語読みのアルヒーブと言うと理解してくれます。橋梁の計算書と図面は公文書の性格がありますので、閲覧利用を考えて書式と体裁を整えて作成します。エクセルSoftは、構造物管理者用の書類を作成することを主目的としています。製作・輸送・架設に関係する項目は、印刷対象のページから意図的に省いてあり、必要に応じて欄外にコメントとして挿入します。例えば、部材継手の位置・リベットまたはボルト添接部・断面構成などに関係する溶接部の設計・補剛材、などは、工場製作側と架設現場の条件で決定する事項です。このようなスタイルの計算書は、新しく橋梁を計画する段階の予備設計としての利用方法があります。計算書の全体見本が見られるように、教育利用も意識して、読み取り専用に変換したエクセルSoftのデモ版(デモンストレーション)を幾つか準備しました。本文をPDF版に落とす配布方法もできますが、コメント欄が欠落しますので、採用しないことにしました。

 プログラムは、準拠する数値類が改訂前の設計示方書に基づいていて、そのままでは利用できないものも少なくありません。例えば、kg-m単位系からSI単位系への移行などに対応していない計算があります。しかしながら、古い構造物の補修などの場合、その構造物が建設された当時の設計法や計算法を知らなければならないので、時代遅れの設計プログラムであっても抹消するべきではないと考えました。また、例えば、現在では殆ど使われなくなったリベット継手の計算などは、種々の設計データを必要としましたが、これらのソースデータは別の設計資料としてまとめていく予定です。

2009.10.18改訂 島田静雄