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4 鳥瞰図は画家の創意が入る

4.1 鳥瞰図は観光用の地図として利用された


 鳥瞰図(bird eye view)とは、高い空中から鳥の眼で観たような景色を想像で描いた風景画です。実際に、そのように見えるとは限りません。現代ならば高い建物から眺めるか、航空写真で斜めに地形を見下ろすように撮影した図を言います。図学的には透視図(パース)です。鳥瞰図は、図学的な正確さではなく、地形や構造物の名前・位置・特徴などを分かり易く表現することに目的があります。写真を使った実際地形の透視図は、図学的には正確であっても、余分な図形も多くなり、文字の書き込みもありませんので、説明用として使う図には向きません。高い位置から見る夜景が好まれる理由は、余分な情報が暗く沈み、注目したい建物や街路が照明で浮き出る景観になるからです。鳥瞰図の古典は、京都とその郊外を描いた洛中洛外図です。幾つかの屏風絵として残されていて、最も古い記録は16世紀半ばの作品です。屏風絵は、現物が一点だけです。明治時代以降は、錦絵として複数部数の出版が見られます。庶民レベルでも旅行が自由にできる時代になって、広い地域の、地図と観光案内とを兼ねたパノラマ的な錦絵の出版は好評でした。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2016」

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