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2 石造のアーチ橋について

2.1 洪水に強い石造アーチ


 日本は、自然災害の多い国です。とりわけ、多くの水害を受けてきました。この原因は、世界の標準から見ると、年間雨量が3倍も多いからです。とりわけ、台風などの集中豪雨で、短い時間に川筋を流れ下る洪水は水勢が強く、多くの橋を流失させてきました。沖縄を含め、九州地方で自然石材を使う石積みのアーチ橋が好まれた理由は、耐久性の面で木橋よりも優れているからです。とりわけ沖縄は、台風の襲来が多い県です。島単位が小さいこともあって、塩を含む風雨が島を通り抜けます。そのため、現代でも、コンクリート橋、さらには鋼橋であっても、内地よりも劣化の速度が速いのです。洪水による橋の流失を抑えるには、地域全体で洪水対策を考える必要があります。ところが、周辺地域の都市化が進み、河川を整備したことで、皮肉なことに、返って流水の勢いが増し、それまで安全であった石造アーチ橋も流失させる災害が発生するようになりました。石積みのアーチ橋では、一跨ぎの径間として10m前後が実用されてきました。そうであると、やや広い川幅では二連以上アーチ構造になります。多連のアーチ橋の橋脚は、洪水時の水勢には必ずしも耐久的ではないのです。したがって、近代的なアーチ橋は、中間の橋脚を省くように、経間を広くできる鉄筋コンクリートアーチ橋、さらには鋼構造のアーチ橋が架設されるようになりました。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2016」

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