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12. 実用文書作成と話し方

12.1 機械翻訳の見方


12.1.1 相手の言語で発信することの難しさがある

 世界には多くの種類の言語があります。異なった言語間で間違いなく情報交換をするためには、互いに相手側の言葉を理解する必要があります。物の名前などは、実物(具体的な物)を前にして相互の言葉の確認ができます。しかし、抽象的で論理的な内容の相互理解は難しいところがあります。一般に外国語を覚える方法の順は、最初、一対一に対応する単語を覚えます。次に単語の並びで文を構成する約束、つまり文法を覚えます。さらに、文の並びで構成される文章の全体で意味を理解します。ここまでは、相手側の言語を理解する段階です。自分側から相手側に伝えたいとき、相手側の言語に直します。自分が伝えたいことを文書にする方法が作文、口頭で言う方法が話し方です。英語では英作文と英会話です。戦前までの日本は、英語を母語とする人(native speaker)が殆どいませんでしたので、学習効果を正しく助言してもらう方法に難しさがありました。戦後、米兵相手の売春婦が使う即物的英語をパンパン英語と言い、品位の無い英会話として軽蔑しました。日常会話での実用的な英会話には、昭和21年から5年続いたNHKのラジオ講座が評判になりました。講師の平川唯一の個性的な教育法から、カムカム英語と言いました。その後、海外旅行をする人が増えましたので、英語に限らず、各国語用に簡単な会話に役立てる本が書店で見られるようになりました。もう一歩進めて、公的な場で使う品位のある実用的な書き方と話し方を学習する教育環境が必要です。こちらの方は、重要視されていますが、具体的にシステム化した教育の場が無いのが現実です。英文の学術レポートを日本人が作成しても、評価がいま一つ得られない理由に、話し方と作文技法の稚拙さがあります。こちらは、教養のあるnative speakerまたは、それなりの経験豊かな専門家に添削してもらう必要があります。そのような人材がいつも身近には居ませんので、ここにコンピュータの助けを借りる機械翻訳(mechanical translation)と人工知能(AI: artificial intelligence)が要望されるようになりました。
2010.12 橋梁&都市PROJECT

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