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11. グラフィックス言語の解説

11.3 グラフィックスの言語設計


11.3.3 オブジェクトの考え方を吟味する

 作図を、部品の集合で構成する考え方は、単位図形を物(オブジェクト)扱いをすることです。モニタ上で図形作成の過程を観察するとき、オブジェクト指向プログラミングを扱います。図形は、形がありますが、手に持てる実体ではありません。立体を表す幾何モデルを図に描くとき、この幾何モデルは仮想(virtual)世界の抽象的な物です。使用材料の性質などは捨象します。多面体の幾何モデルは、頂点・辺・面で構成するとしますが、これをさらに抽象化した存在概念が、幾何学で言う点・直線・面です。こちらは、本来、図に描くことができません。幾何学の説明に図を描くのは、理解を助けるための便宜的な方法です。さらに言えば、例えば、平面幾何学の直線は向きを考えません。図形として描く直線は、向きを考えることもしますので、描き順や、直線の左右を区別する情報も必要です。図形としての直線を正確に定義したいとき、座標系を考えて、代数的に直線の式、例えば「y=ax+b」を考えるとしましょう。これは、オブジェクトとしての直線のプロパティを、二つのパラメータ(a,b)で定義したことになっています。名前を付けて、aを勾配、bを初期値のように言うこともします。具体的にはこれに数値を充てることが宣言です。ここで、数と言うのも、実体のない抽象的な概念であって、代数学は、数に代えて記号を使います。眼に見える実体を持たせるときに数字を書きます。数値計算を扱うプログラミングを開発することを課題とすると、数学で言う数を、コンピュータのデータとして正確に扱うことができない問題が持ち上がります。コンピュータ言語では、数を実数型・整数型のような区別をします。これはビット並びで数を表す定義です。数を文書で表すときは、眼に見える文字並び、つまり図形、で表しますが、そうすると、この文字並びは図形オブジェクトの性格を持ち、印刷領域のどこに書くか、の扱いが必要になります。ワードプロセッサは、オブジェクト指向でプログラミングしたソフトウエアであると考えることもできます。文字処理用の関数やサブルーチンがあります。これをメソッドと言い換えてもよいわけです。文字を表すデータ型(バイト型)があります。また、文字列(string)を型として扱うプログラミング言語もあります。フォントなどがプロパティに当たります。
2010.11 橋梁&都市PROJECT

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