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11. グラフィックス言語の解説

11.1 設計と製図


11.1.1 設計図に要求される事柄

 この章の主題に入る前書きとして、設計と製図、および作図装置の話しを省くことができません。工業製品の製作は、未だ存在していない形状と寸法とを頭の中で想像し、それを設計図に表す作業から始めます。設計作業では、図面を作ることが必須ですので、設計・製図と繋いで言うこともします。設計の英語はdesignです。カタカナ用語のデザインと使うと、世間的には、見取り図的な図を描くことと同義に捉えるようです。コンピュータを使う場面では、CAD(Computer Aided Design)と使うようになりました。これも、CADのソフトウエアと言うときは、作図のソフトウエアと同義に使われています。一方、芸術活動では、フランス語のデッサン(dessin)を使います。日本語では下絵、素描などと当てます。工業製品の製図は、製作作業に必要な幾何学的な形状と寸法を、間違いなく伝えることを目的とします。製作時の作業目的に合わせて、必要十分の条件を満たさなければなりません。また、作業目的に直接関係しない情報を、意図的に省くか、重複記入も避けます。したがって、設計図面単位は、作業目的に合わせて複数の図をセットにして構成します。一つの図面単位で、何を表示し、何を削除するかは、製作対象ごとに異なります。そのため、言葉として、特に工業製図(engineering drawing)と断ります。製図の描き方については規格が制定されていますし、その技術教育が重要です。形状と寸法の情報が不十分であるものは、仮に見栄えの良いイラスト(挿絵:illustration)であっても、参考にはなりますが、製作現場で利用する図面としての実務的な意義はありません。漫画的な挿絵を埋め草的に描くなどは、子供向けには大目に見ても、図の作成者の技術レベルや品位が低く見られます。
2010.11 橋梁&都市PROJECT

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