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9. データベースと文字処理

9.2 文書の整理


9.2.1 倉庫を別に設ける習慣がなかったこと

 公私に関わらず、我々は、日常的に、何かを探す作業と、保存と再利用を目的とした整理作業に多くの時間を取られます。典型的には家事がそうです。整理を合理的にするためには、保存と廃棄のための空間を別に必要とします。欧米では冬の寒さが厳しいので、家屋が閉鎖的です。冬籠りを考えて、物を溜め込む倉庫の空間を別に持つ習慣があります。日本建築は、開放的です。押入れを個別の部屋に設けますが、それでは足りないとき、収納用の家具を持ちこみますので、その分だけ部屋が狭くなります。夏炉冬扇と言う言葉があります。収納場所が別に無いので、夏冬 別に使う道具が一部屋に同居した状態を言います。公共的な建築物は、いわゆる箱モノとして当事者が欲しがりますが、建築家も含めて、倉庫の空間を最初から準備しておく設計習慣がありません。その空間があったとしても、そこを機能的に活用する、つまり、整理する技法も、経験的に覚えます。大学の研究者は個室を欲しがるのですが、公的な空間を私的に使っています。公的な整理法と私的な整理法との使い分けが必要です。図書館は、書物を公的に保存整理する機関です。企業内では、個人が私的に書物を整理保存するのも大切です。しかし、原則として、公的な場所に私物を持ちこむべきではありません。企業では、それを厳しく管理するため、制服を義務化し、ロッカールームを別に用意することなどが見られます。
2010.9 橋梁&都市PROJECT

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