目次ページ  前ページ  次ページ

8. 論理を表す文と式

8.4 プログラミングに使われる修辞学


8.4.1 無生物を主語とする文は動詞を取らない

 論理的に正しい文章を書くとき、無生物を主語に立てる文は、自動詞も他動詞も使うことはできません。無生物が、あたかも意識を持っているかのように動作をすることはありませんので、自動詞を取りません。また、無生物が何かに働きかける他動詞を取ることも、ありません。無生物の状態を言う文は、be動詞に形容詞を繋ぎます。しかし、無生物であっても、レトリックとして擬人化する言い方は、普通に使います。自然現象、例えば「陽が昇る」「風が吹く」「雨が降る」などがそうです。この言い方の裏には一種の宗教観があります。日本では、太陽神、風の神、雷神など、複数の専門家集団の神が居て、それぞれが自然現象を司る、とするアニミズム(animism)があります。「雲が雨を降らす」のような他動詞を使う言い方も、不自然ではありません。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教などの一神教は、唯一の万能の神が、自然現象を含め、すべてを制御しているとする宗教観ですが、日本的な感覚からは納得できないのです。コンピュータは人工的な装置ですので、コンピュータを動かす主語は人です。間接的に人を介して動かすと、コンピュータを擬人化したことと同義になりますので、他動詞を使った命令文でコンピュータを制御することは、文章論理的には矛盾しません。しかし、コンピュータ本体が無生物であることも意識にありますので、物理的また幾何学的な性質も扱います。その代表的なものがデータ型です。そして、これを扱う代表的な動詞は、英語ではbe動詞です。定義文、宣言文、代入文は、コンピュータが自分の判断でデータを発生も取り込みもしなくて、人の側でデータを扱うからです。ただし、be動詞を表(おもて)だって使うことは少ないのですが、イコール記号が代わりに使われるのが普通です。
2010.8 橋梁&都市PROJECT

前ページ  次ページ