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13. 連続桁の計算(続)

13.1 古典的な不静定問題


13.1.5 連続合成桁のコンクリート部の応力度問題

 鋼主桁とコンクリート床版の全体を合成桁として設計するときは、鉄筋コンクリートのスラブを主桁全体の上フランジ断面に組み込む計算をします。そうすると、連続版の中間支点上が負の曲げモーメントを受ける領域になりますので、コンクリート部分に引張応力度が発生することを考えなければなりません。設計計算では、安全を考えてコンクリートの引張強度を無視する仮定を使うこともします。実際には、コンクリートはかなりの引張強度を期待できます。応力度の計算に関しては、紙の上だけの思いつき提案が幾つもあります。理想を考え過ぎて、鉄筋断面積だけを鋼断面に繰り込み、コンクリートは砂と同じと仮定する人もいます。死荷重による応力度は、実際の構造物で、実験的な確認ができません。もし必要であれば、歪みの経年変化を測定して死荷重応力度を推定します。コンクリートは、材令が進むと強度も弾性係数も幾らか増えます。クリープ現象もありますので、年月が経つと応力が平均化するようです。歪みの経年変化を測定する研究は、コンクリートダムでは、カールソンゲージが使われていました。ダムでは管理事務所でモニタ観測ができますが、橋梁でのモニタリングは現実的には実用になりません。したがって、既設橋梁の再現設計の場合には、活荷重による応力の傾向だけを計算します。こちらは、実験的に応力測定で確認することができます。なるべく費用をかけないで既設橋梁の弾性的な傾向を知る方法が、簡易な振動測定の位置付けです。構造計算上の仮定は、引張を受けるコンクリート部分も全断面が有効に作用するとして計算するのが実践的です。鉄筋コンクリート床版(スラブ)の設計計算では、鉄筋とコンクリートとの相対的な寸法と位置関係を使うとしても、合成断面に組み込むときには、鉄筋を含めたスラブ全体を均質なコンクリート断面として計算し、鉄筋断面積だけを特別な部材要素として組み込むミクロな仮定をしません。
2010.4 橋梁&都市PROJECT

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