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11. 小径間吊橋の計算(続)

11.5 撓み振動の計算


11.5.1 耐風安定性に関係する変形と振動

 設計計算時には、吊橋側面に作用する風は、静的な荷重として扱います。しかし、タコマ吊橋は、風に煽られてリボンがはためくように捩れ振動をした挙句に疲労で落橋しましたので、風の動的な作用を解析する耐風安定性の研究を刺激しました。風速が低いとき、風荷重の大きさが大きくなくても、共振振動を起こすように風荷重が動的に同期することがあります。これが自励振動です。この場合には、支間中央に節のある逆対称モードの上下動、または捩れ振動が見られます。普通、上下振動と捩れ振動とが連成することはなく、最初は上下振動であったものが、或る風速以上になると、捩れ振動に変わることが実験的に分りました(平井敦)。これを限界風速と言います。補剛桁の捩れ剛性が小さいと、捩れ振動が出易くなります。原理的には少し違う現象ですが、カルマン渦列の発生周期との同期が考えられることがあります。これは、斜張橋のケーブルに頻発しました。電力送電線は、強風時に、縄跳びの縄のような、支持間で1波形の跳躍振動(galloping vibration)が起こることがあります。これは、送電線の支持個所を疲労破壊させますので、振動を制御する方法が研究されています。構造物が振動すること自体は復元力があることの証明になり、悪い現象ではないのですが、振動が減衰しないで持続すると、疲労の面で問題を起こします。
2010.2 橋梁&都市PROJECT

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