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5. プレートガーダーの構造

5.3 主桁鋼断面の提案法


5.3.1 鋼桁だけの断面提案法

 橋梁の設計計算書は、主に橋梁の専門家が見る文書ですので、必要最小限の計算数値しか記述しません。上で解説した板厚・板幅の選択などは、示方書に規定している場合もありますが、理論的な背景や、理論式の誘導などについての説明は、計算書には書きません。また、管理上の図面も、一般図までであって、やや詳しい設計図は、製作や架設の現場で利用するように作成します。橋梁技術は、欧米、特に米国に多くを学びましたので、単位系にはフィート・ポンド法に原点を持つ数値が多く隠れています。その時代は、民間技術を育成する必要もありましたので、橋梁技術の殆どすべてに渡って、官・学が指導的立場にありました。しかし、学の側は、学術論文的な問題を扱うことに偏る嫌いがあって、実践的的な説明を文書にして残すことは多くありませんでした。橋梁の建設需要が多くなると共に、民間への技術移転(technology transfer)が進みましたが、実用文書に残して伝える方法が軽視されていました。その反動として、橋梁の管理者側である官・学の側に勉強不足と経験不足が起こり、いわゆる技術移転の空洞化が起こり始めました。また、プレートガーダーの設計法を勉強しても、それを具体的に応用する機会が少なくなったからです。しかし橋梁を管理するためには、先達が努力した設計技法の理解が必要です。これは非常に多くの項目があります。その一つが、フランジ断面積を決定する試行錯誤の過程を数式化する手法です。これは、計算書として表に現れることはありませんが、実務的な設計では、予備的な計算として使います。単純な数式であるため、取り澄ました橋梁工学の参考書に紹介される例は多くありません。
2009.8 橋梁&都市PROJECT

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