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4. トラス橋計算エクセルSoftの解説

4.3 鉄筋コンクリート床版の計算


4.3.3 最小スラブ厚の制限が変化してきたこと

 道路橋の床版は、耐久性の見地から、鉄筋コンクリートスラブで施工するのが標準です。床版は、トラックのタイヤを介して局部的に大きな荷重を受け、衝撃のような動的な影響を直接受けますので、他の部材に較べて早く傷みます。スラブ厚が薄く、大きな集中荷重が狭い範囲に集中すると、スラブの押し抜き剪断が起こりますので、分布幅が広くなるように舗装を設けます。以前、東京の首都高速道路で、約20cm角のスラブが陥没しているのが散見されました。原因は、ダンプカーの後輪がパンクして、タイヤ交換をするとき、支圧面積の小さなジャッキを使って重い車体を持ち上げたことによるものでした。鉄筋コンクリートのスラブは重量が嵩みますので、主構造の方を経済的に設計したいとして、設計者はなるべくスラブ厚を抑える工夫をしました。コンクリートと鉄筋の許容応力度が高くなかった時代のスラブは、そこそこの厚みがありました。スラブの断面設計に曲げモーメントを主体にして計算するときは、コンクリートと鉄筋の許容応力を高くすれば薄いスラブ厚でも理論上は持ちます。最小スラブ厚の規定は、S31では11cmで妥協が図られました。しかし、その結果、撓みも大きくなり、疲労の影響も顕著になり、上で解説したような押し抜き剪断も現実に起こるようになりましたので、H14ではスラブの最小厚が16cmに引き上げられました。
2009.7 橋梁&都市PROJECT

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