3.3 漢字の作図

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 工業では、図面を介して設計者と製作者との情報伝達を行います。図面は、対象物の形と寸法とを示す文書です。現場で広げて使うことが多く、書物のようにページをめくる形は実用的ではありませんので、一般に大きな寸法の用紙を使います。図面は、言語の説明なしに利用できるように、文字は数字と記号とを主に使い、英字も記号扱いとする習慣です。図面は格好付けたデザインとは違いますし、図面を見る(読むとも言います)担当者は必ずしも英語に堪能とは限りませんので、日本語での文字記入が必要です。特に固有名詞などはローマ字表記ではさまになりません。そのため、CADでは日本語の文字が書き込める機能が必須です。数字や記号を含め、文字は線図と共に任意の角度と寸法で記入しますので、文字をベクトルフォントで書き込めるようにサブルーチンを準備しなければなりません。英数字と記号の場合には、文字種類が200種類程度です。日本語で使用する文字種類は、英数字、記号、仮名、それに漢字そのものを含めて総称しますので、数千種類になります。このベクトルフォント全体を漢字フォントと総称します。漢字のベクトルフォントの開発と利用には種々の経緯もありますが、このVB_Graphicsで利用しているのは、伊藤/坂巻[7]版のデータです。

 文字のベクトルフォントのデータは二つのファイルを使います。英数字と記号だけのデータを納めたファイルと、漢字を納めたランダムファイルとです。前者は半角フォント、後者は全角フォントの扱いです。幾何学的な文字並びは、等幅フォントで設計します。したがって、英数字記号は、半角フォントと全角フォントの二種類があります。この使い分けは、日本語の文書内での習慣に従います。半角フォントは、Calcomp社のプロッタを利用していた時代には既に組み込みサブルーチンの形で利用できました。漢字のフォントは、種類も多く、画数も多いので、ランダムファイルが便利に利用できる環境になって実用になりました。したがって、文字のフォントファイルは二種類あります。これらのファイルは、実行形式のVB_Graphicsと同じフォルダに置いて利用しますが、プログラムの開発段階などで別のフォルダにあるときには、コモンダイアログボックスが開いてファイルのパス名を要求するように動作します。

 下の例図は、FILEの Samplesサブメニューの中の 19.Kanjiの実行画面を示したものです。漢字の字形は、32×32の方眼座標を使って折れ線の集合で表します。16×16ですと画数の多い文字を表すときに少し苦しくなります。半角フォントは、16×8で充分に表現できます。方眼の数を増やせば滑らかな文字を作図できますが、ファイルの容量は増えます。

図5. 例題(16.Kanji)漢字(仮名も含む)の作画例


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