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5. 弾性的性質の数学モデル

5.4 柱の座屈の現れ方


5.4.1 仮想変位を理解する

 構造物の安定・不安定を扱うとき、普通ならば考えない変位が出たらどのように振る舞うかの数学モデルを考えまず、これを仮想変位(virtual displacement)と言います。変位を起こすには何かの力の作用を必要とするとして、釣り合い問題を扱うとき、仮想仕事の原理が応用されます。このときは、仮想変位の方向に力を考え、その力と力方向の変位の積である仕事に注目します。しかし、座屈を扱うときに考える仮想変位は、力の作用方向とは直交する方向を考えますので、力学的な安定問題では盲点になっていました。理論的に扱う柱は、真っ直ぐを仮定します。実際に製作される柱は微妙な横変位がありますので、これを仮想変位とします。数学的にモデル化するときは、確率的考え方をします。しかし、確率・統計的方法を理論家は好まない傾向があります。図5.4は、柱の座屈を考えるときのモデルです。仮想変位を正弦波形で扱いますが、その大きさと向き(正負)とは全くの仮想値です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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