印刷物にして論理的な説明をしたいとき、やや特殊な記号や文字は、活字を別に作りました。数学記号は比較的利用の頻度が高いのですが、活字を組むときに特別な約束が多いので、科学技術関係の書籍と文科系書籍の出版社などと、得意分野の専門区別があります。個人単位で文書原稿を作成するとき、欧米語ではタイプライタが標準的な道具ですが、日本語では手書き原稿が普通です。ワードプロセッサは、英文タイプライタのキーボードを利用します。このとき、そこで使える文字キーの組み合わせで特殊文字や記号の情報を入力します。初期の英文タイプライタでは、記号文字の種類は僅か10個程度です。電報の送受信に使ったテレタイプライタ(TTY; Teletypewriter)は、英小文字を使いませんでしたので、そのコード系は6ビットでした。初期のコンピュータは、入出力装置にTTYを使いました。数学式で扱う大小関係を表す記号(<、>)がありませんでしたので、プログラミング言語のFORTRANでは英字も大文字だけを使い(.LT.)(.GT.)のような表記法を使いました。コンピュータ用のキーボードは、IBM社の提案になる101-keykeyboardの仕様が標準となって、英小文字も使えるようになり、かなりの数の記号文字が使えるようになりました。しかし、数式記号にはギリシャ文字なども使いますので、キーに文字や記号を割り当て、コードを決めるることには限界があります。これは、通信回線を使ってデータを送受信し、同じ図形文字や記号文字を再現するときの障害になります。漢字を使う日本語の文書では、漢字の種類が多いので、同じ問題を、ローマ字入力→仮名変換→漢字変換の方法で解決しました。論理学の記号と集合論の記号とは異なった図形仕様ですので、その比較一覧を表1.1に示します。
表1.1 種々の記号
論理学用語> |
論理学の記号>(*1) |
集合論の記号 |
計算機言語>(*2) |
英文 (*3) |
和文 (*3) |
否定 (*1) |
P ,¬P |
記号に上線を引く |
NOT |
not |
…でない |
選言、 論理和 |
P∨Q (*4) |
P∪Q (*5) |
OR |
or, and/or |
または |
排他的選言、 排反、非両立 |
P∨Q (*6) |
P≠Q |
XOR |
exclusive or |
どちらか |
連言、 論理積 |
P∧Q, P&Q |
P∩Q |
AND |
and |
かつ |
内含、 含意 |
P⇒Q |
P⊃Q Q⊂P |
IMP |
if〜then,imply |
ならば |
可逆的内含 対等、同値 |
P≡Q |
P⇔Q |
EQV |
equivalence |
|
全称記号 |
|
∀x Πx |
|
|
すべての… |
存在記号 |
|
∃x Σx |
|
|
あ(或)る… |
帰属 |
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∋ ∈ |
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inclusion |
(部分を) 含む |
包摂 |
|
⊇ ⊆ |
|
subsumption |
(全体を) 含む |
注
(*1)この教材の説明では、論理学の記号(取り消し線を使うP)の方を表記に用います。
式全体を否定にする場合は、式を括弧()で括って、その前に¬の記号を書きます。
(*2)BASIC言語で用いる論理演算子の表し方を例示します。
(*3)日常言語のなかで使われる表現と、論理学での定義とでは少し異なることがあります。 (*4)全角英字のVと字形が似ていますので注意して区別して下さい。
(*5)全角英字のUと字形が似ていますので注意して区別して下さい。
(*6) 選言記号∨にアンダーラインを付けた表記です。
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科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」 |