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1. 用語の定義と解説

1.5 論理式に使う記号


1.5.4 キーボードにない記号の扱い方

 印刷物にして論理的な説明をしたいとき、やや特殊な記号や文字は、活字を別に作りました。数学記号は比較的利用の頻度が高いのですが、活字を組むときに特別な約束が多いので、科学技術関係の書籍と文科系書籍の出版社などと、得意分野の専門区別があります。個人単位で文書原稿を作成するとき、欧米語ではタイプライタが標準的な道具ですが、日本語では手書き原稿が普通です。ワードプロセッサは、英文タイプライタのキーボードを利用します。このとき、そこで使える文字キーの組み合わせで特殊文字や記号の情報を入力します。初期の英文タイプライタでは、記号文字の種類は僅か10個程度です。電報の送受信に使ったテレタイプライタ(TTY; Teletypewriter)は、英小文字を使いませんでしたので、そのコード系は6ビットでした。初期のコンピュータは、入出力装置にTTYを使いました。数学式で扱う大小関係を表す記号(<、>)がありませんでしたので、プログラミング言語のFORTRANでは英字も大文字だけを使い(.LT.)(.GT.)のような表記法を使いました。コンピュータ用のキーボードは、IBM社の提案になる101-keykeyboardの仕様が標準となって、英小文字も使えるようになり、かなりの数の記号文字が使えるようになりました。しかし、数式記号にはギリシャ文字なども使いますので、キーに文字や記号を割り当て、コードを決めるることには限界があります。これは、通信回線を使ってデータを送受信し、同じ図形文字や記号文字を再現するときの障害になります。漢字を使う日本語の文書では、漢字の種類が多いので、同じ問題を、ローマ字入力→仮名変換→漢字変換の方法で解決しました。論理学の記号と集合論の記号とは異なった図形仕様ですので、その比較一覧を表1.1に示します。

表1.1 種々の記号

論理学用語>

論理学の記号>(*1)

集合論の記号

計算機言語>(*2)

英文 (*3)

和文 (*3)

 否定
    (*1)
  ,¬P  記号に上線を引く  NOT  not  …でない
 選言、
 論理和 
 P∨Q  (*4)  P∪Q  (*5)  OR   or, and/or   または 
 排他的選言、
 排反、非両立
 PQ  (*6)  P≠Q  XOR  exclusive or  どちらか
 連言、
 論理積
 P∧Q, P&Q  P∩Q  AND  and  かつ
 内含、
 含意
 P⇒Q  P⊃Q
 Q⊂P
 IMP  if〜then,imply  ならば
 可逆的内含
 対等、同値
 P≡Q  P⇔Q  EQV  equivalence   
 全称記号     ∀x
 Πx
       すべての…
 存在記号     ∃x
 Σx
       あ(或)る…
 帰属     ∋
 ∈
    inclusion  (部分を)
 含む
 包摂     ⊇
 ⊆
    subsumption  (全体を)
 含む

 (*1)この教材の説明では、論理学の記号(取り消し線を使う)の方を表記に用います。
   式全体を否定にする場合は、式を括弧()で括って、その前に¬の記号を書きます。
 (*2)BASIC言語で用いる論理演算子の表し方を例示します。
 (*3)日常言語のなかで使われる表現と、論理学での定義とでは少し異なることがあります。
 (*4)全角英字のVと字形が似ていますので注意して区別して下さい。
 (*5)全角英字のUと字形が似ていますので注意して区別して下さい。
 (*6) 選言記号∨にアンダーラインを付けた表記です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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