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6. 著作権など

・文書は著作権の対象
 文書は、原則として著作権の対象になります。実際問題としては難しい判断が必要ですが、要するに自分の作ったものを含め、データをコピーして利用することには注意が必要です。文書だけでなく、映像や音声などもデジタル化して利用するようになりました。データ処理技術としては文書・映像・音声の境界がなくなってきましたので、一言で情報と括るようになりました。文書や画像の場合、原本と複写という対立概念は比較的理解し易いと思います。しかし、映像や音声となってくると、元とする対象の実体が、それを記録している物理的媒体そのものではなく、もう一つ上位の概念に移っています。つまり情報が記録される媒体、つまり文書では体裁が下位概念に移って、多様になってきたことです。デジタル化された情報は、種々の規格の磁性材料のディスクや光ディスクで保存できます。そして、複写によっても情報の実質的な中身が変質しませんので、どれを物理的な元資料と定義して著作権の保護の対象とするかの判断が難しくなってきました。

・著作権の基本思想
 著作権と言えば大袈裟に聞こえますが、その基本思想は、いつ、誰が、どこで、何を目的として、どうやって作ったかを明らかにすることが著作権の宣言につながります。手紙の書き方では、署名と共に日付けを入れることを忘れないようにします。電子メールのソフトウェアでは発信の日時が自動的に入りますが、本文にも書き込む習慣を付けておくのがよいでしょう。通信の秘密保護の思想は、通信内容を勝手に利用することを防ぐことに繋がりますので、著作権の考え方に沿っています。したがって、親しい間でのメールの交換であっても、節度のある利用を心掛けないと恥さらしの証拠として残る恐れがあります。一方、作者名や出所を明らかにしない文書は怪文書になります。発信元が分からないようにした嫌がらせ電話や迷惑電子メールが横行していますが、これは犯罪です。

・文書の記録媒体の寿命が問題
 文書の保存のことを考えるとき、物理的な記録媒体の寿命が問題になります。文書の場合、和紙に墨で書いたものは、虫除けや防湿に注意すれば千年の保存に耐えることが歴史的に証明されています。一方、新聞紙などの酸性紙が自然に変質してボロボロになっていくのは実感されていると思います。銀塩の写真記録は百年の歴史がありますので、マイクロフィルムによる記録の保存は、現状では最も信頼性が高いものです。コンピュータの記録媒体である磁気テープやディスクの歴史は未だ新しく、歴史の試練を経ていませんし、また、規格が目まぐるしく変ってきましたので、信頼性は高くありません。磁性材料は年月とともに磁性がドロップアウトして読めなくなりますので、定期的なバックアップが必要です。CDなどの光ディスクはドロップアウトが無いと言われていますが、まだ歴史的な評価が定まっていませんので保存媒体としては慎重に成り行きを見る必要があります。

・技能は文書に書いて残せない
 コンピュータの記録媒体が読めなくなることの被害はかなり現実的です。大学などで、研究の基礎データが読めなくなるのは、知的財産の喪失ですので非常に重大なことなのですが、眼に見える建物や器財などだけを財産と考えていると評価を誤ります。現在は、ソフトウェアがハードウェアと同等、もしくはそれ以上に価値を持つ時代になってきました。ここで、もう一つ、忘れてはならないものに技能の伝承があります。英語でいえばノウハウです。技能を文書に書いて残せることができれば、コンピュータがそれを理解することができます。これを信奉したのが人工知能やその応用としてのエキスパートシステムです。しかし「自転車の乗り方」という自習書はありません。テレビで見せたからといって、初心者がいきなり乗れるはずもありません。技術の伝承と教育とに、知識人の理解が得られないのは、眼学問や知識偏重の教育の一つの悲しい表れです。


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