コンクリートと鉄筋の応力を表わす場合、従来の設計法では重力単位系に基づくkg-m法を使っていました。この表示法に代わって、SI単位系を採用することが規定されましたので、かなり混乱が生じています。SI単位系は、質量と力とを明確に区別する表記法ですので、理論の上では合理的です。その結果、重力は、質量(kg)に明示的に重力の加速度9.8(m/sec2)を乗じた値、N(ニュートン)で表示します。例えば、体重60kgというときには、9.8を乗じて、約600N(ニュートン)言わなければなりません。
土木構造物では、設計荷重の言葉で表わされるように、力は殆どが重さによって生じますので、設計荷重を考える場合にニュートンに直して表示すると感覚的に理解でき難くなります。地球物理学的に厳密に考えると、重力の加速度は場所によって変わりますし、高地は低地よりも小さく表れます。また、空気の密度による浮力も補正しなければなりません。このような理論的な補正は実用的ではありませんので、工学的な設計計算では重力単位で計算を進め、応力の検証などの段階でSI単位系の表示にするのが実践的です。土木構造物は長い年月に渡って供用されますので、比較のために古い設計方法による表示方法についても理解できなければなりませんので、換算を頻繁に行なう必要があります。
SI単位系は、構成単位として質量キログラム(kg)とメートル(m)を基本とします。従来の重力単位として実用されていたトン(t)、長さとしてのセンチ(cm)とミリ(mm)との組み合わせをSI単位系で表わすと、端数が出ると同時に位取りが変わります。力に直す場合にはkgに換算して約10倍(正確には9.80665倍)します。数値の大きさの順に並べて、下の表に整理して示します。
|
Pa |
kgf/m2 |
tf/m2 |
kgf/cm2 |
kgf/mm2 |
tf/cm2 |
tf/mm2 |
Pa= |
1 |
1.02×10-1 |
1.02×10-4 |
1.02×10-5 |
1.02×10-7 |
1.02×10-8 |
1.02×10-10 |
kgf/m2= |
9.8 |
1 |
0.00 1 |
0.00 01 |
0.00 000 1 |
0.00 000 01 |
0.00 000 000 1 |
tf/m2= |
9.8×103 |
1 000 |
1 |
0.1 |
0.00 1 |
0.00 01 |
0.00 000 1 |
kgf/cm2= |
9.8×104 |
10 000 |
10 |
1 |
0.01 |
0.00 1 |
0.00 001 |
kgf/mm2= |
9.8×106 |
1 000 000 |
1000 |
100 |
1 |
0.1 |
0.00 1 |
tf/cm2= |
9.8×107 |
10 000 000 |
10 000 |
1 000 |
10 |
1 |
0.01 |
tf/mm2= |
9.8×109 |
1 000 000 000 |
1 000 000 |
100 000 |
1000 |
100 |
1 |
1Pa(パスカル)は1N/m2(ニュートン/平米)のことです。応力や圧力の場合には(t/m2)、(t/cm2)、(t/mm2)、(kg/m2)、(kg/cm2)、(kg/mm2)の表示をパスカル単位にするのが理想ですが、工学的には単位面積当たりの表記の方が感覚的に理解し易いこともあって、N/cm2, N/mm2の表記も使われます。これが混乱の一つの原因になっていて、重力単位系から換算するときに表記の揺れが起こります。特に、N/mm2とN/m2とを誤記し易いので、MPa, Paを表記に使う方が本来は安全です。上の表1と併用する換算表を大きさの順に揃えて下にまとめます。
|
Pa=N/m2 |
N/cm2 |
kPa |
MPa= N/mm2 |
Pa=N/m2= |
1 |
0.01 |
0.00 1 |
0.00 000 1 |
N/cm2= |
100 |
1 |
0.1 |
0.00 01 |
KPa= |
1 000 |
10 |
1 |
0.00 1 |
MPa= N/mm2= |
1 000 000 |
10 000 |
1 000 |
1 |
鉄筋コンクリートの計算では、コンクリートと鋼の応力を重力単位のkgf/cm2から、SI単位系で表示することが増えました。数値を約100倍(正確には98倍)するとキロパスカル単位になります。0.1倍するとN/mm2単位、またはMPa単位になります。自重などを計算するときに使う荷重は、kgf/m2単位を使うのが感覚的に分かり易いのですが、数値を約100倍するとキロパスカル単位になります。逆にN/mm2単位、またはMPa単位で表示されている値は、数値を約10倍(正確には10.2倍)するとkgf/cm2になります。